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2015回顧録(22)

12月定例会一般質問より

③高齢者虐待について

「先日、とある書店でPOP広告に目が止まり1冊の本を購入しました。タイトルは「下流老人」。著者である藤田孝典氏によりますと、まもなく日本の高齢者の9割が下流化し、生活保護レベルの暮らしを余儀なくされるだろうとのことで、そこには孤立・貧困化する、深刻な高齢者問題が描かれておりました。

著者いわく、下流老人には3つの“ない”が揃っているとのこと。即ち、収入が少“ない”、十分な貯蓄が“ない”、頼れる人がい“ない”。この3つの指標をもって下流老人の実像としておりますが、周囲を見渡しますと、これに当てはまると感じる高齢者は決して少なくないのではないでしょうか。

長年、生活困窮者の支援を行ってきた“著者自らの経験に基づく仮説”というところに説得力があり反響が広がっていると思うのでありますが、政治に携わる我々としてはそのような事態を全力で回避しなければなりません。

高齢者に関わる問題はあまりにも多岐にわたりますが、以下、高齢者虐待について取り上げたいと思います。

大阪市の特別養護老人ホームで介護士が入所者の首を絞めた事件、川崎市の有料老人ホームで入居者3人が相次いで転落死した事件、岩手県葛巻町(くずまきまち)の特養で職員が入所者に約2週間のけがを負わせた事件など等、近年、介護施設での虐待事件が後を絶ちません。

言うまでもなく、虐待は重大な人権侵害であります。あってはならないはずの介護施設で、なぜこれほどまでに虐待が発生するのか?行政は早急にその原因を究明し、再発防止策を講じなければなりませんし、そのためには、高齢者と介護現場がそれぞれどんな状況におかれているのかという実態を直視する必要があります。

まず、高齢者に目を向けますと、厚生労働省の高齢者虐待対応状況調査では、2013年度に介護施設や居宅サービス事業等において介護事業従事者による虐待があったと判断された件数は過去最多の221件で、被害者の大半が“認知症”であったとのこと。

一方、介護事業従事者側では、加害者の多くが“若い職員”であり、認知症に対する知識や介護技術など“スキル”の問題や、ストレスや感情コントロールの問題などが虐待の発生要因として挙げられております。がしかし、追い込まれているのは決して若い職員だけではありません。そこに介護現場全体を覆う切実な背景があることは、以前から指摘されている通りであります。いわゆる“低賃金”、“過重労働”、ゆえに“人手不足”という負のスパイラル構造です。

このように一連の事件を見ていきますと、“認知症”、“人材育成”、“低賃金・過重労働”、“人手不足”など、高齢者虐待を防止するためのキーワードがいくつか浮かび上がってまいります。

まず、認知症についてでありますが、本県の認知症高齢者数は本年4月1日現在、53,273人。ちなみにここ数年は毎年2,000~3,000人ずつ増えており、団塊世代が75歳以上となる10年後には64,800人にまで増加するとの見通しであります。

私は、果たしてこれをどのように抑制していくのか?という視点と、認知症に対する正しい理解を広げながら、認知症になってもお互いが安心して暮らせる地域社会をどう実現していくのか?という2つの視点を併せ持った取り組み、いわゆる“地域包括ケアシステム”の構築が今こそ強く求められていると思います。

そこで、お伺いします。
まず、本県における高齢者虐待の状況はどうか?また、高齢者虐待と認知症の関連についてどのように認識しているのか、ご所見をお示しください。

次に、認知症高齢者がますます増加する将来を見据えた当面の対策はどうか。また、地域包括ケアシステムの構築に今後どのように取り組んでいくのか、できるかぎり具体的に見解をお聞かせください。

次に、介護分野における人材育成と、低賃金・重労働、人手不足でありますが、これらは密接にリンクしていると言われています。

中でも最大の鍵を握るのは、賃金です。
他業種と同水準の賃金になれば人手不足の解消が進み、過重労働も緩和されるとともに、人材育成にもより経営資源が振り向けられ、結果的に高齢者にとってより多くの満足や安心につながっていく。そうしたお声を私も、これまで多くの介護従事者から伺ってまいりました。

厚生労働省が実施した賃金構造基本統計調査によりますと、2014年の福祉施設の常勤介護職員の月給は全国平均で219,700円と、全産業の平均329,600円に比べて約11万円低いとのこと。今年度は制度改正により介護職員の賃金を1人あたり月1万2000円相当引き上げるための加算措置が創設されましたが、ケアマネジャーや生活相談員は対象外であるなど不十分といった声が多いというのも残念ながら事実であります。

現行制度の中ではそもそも介護報酬は公定価格であり、事業者がサービスに応じて自由に価格を決めることができず、介護報酬を引き上げると利用者負担及び保険料も上がるしくみとなっており、それも限界に近づいているというのが今の状況であります。

そこで、お伺いします。

高齢者虐待の背景にある介護分野における人材育成と、低賃金・重労働、人手不足という密接にリンクした諸課題について、県はどのように認識し今後どのように取り組んでいくのかご所見をお示しください。

また、先に述べましたように、高齢者虐待と介護職員の置かれている状況の問題は決して無関係とは思われません。高齢者虐待を未然に防止するためには、事業所施設全体としてサービスの質を向上させていくことが肝要であり、その意味では、まず事業者自らが人材の育成や職員の処遇改善に向けて取り組む努力が求められるでありましょう。

本県におきましても、2006年度から福祉サービス第三者価事業に取り組んでおられますが、事業者がこれを積極的に活用し、職員の処遇改善や利用者のサービス向上に取り組むことにより、結果として高齢者虐待に対する抑止効果が発揮されるものと期待しているところであります。

そこで、お伺いします。
これまで約10年間、県が取り組んできた福祉サービス第三者評価事業の成果と今後の課題は何か。又、今後どのように取り組んでいくのか、見解をお聞かせください。

一方、高齢者虐待は介護施設のみならず、家庭においても顕著です。先に述べた厚生労働省の調査によりますと、2013年度の家族や親族による虐待は15,731件と3年ぶりに増加したとのことであります。

虐待を受けた高齢者からみた虐待者の続柄は、息子が41%と最も多く、次いで夫が19.2%、娘が16.4%となっており、虐待者と高齢者が2人だけで同居しているケースが約半数を占めています。

虐待の発生要因は、「介護疲れ・介護ストレス」が最も多く、一方で、被害者が介護保険サービスを受けている場合は、虐待の程度が低い傾向にあるとのことで、あらためて介護支援者という存在がいかに重要であるか、痛感せずにはいられません。

さて、本県では、2014年2月議会において、議員提案により「県家庭における暴力及び虐待の防止並びに被害者の保護等推進条例」を成立させています。

この条例は、「家庭内での暴力、虐待の防止や被害者の保護について、家庭における個人的な問題ではなく、社会全体で解決すべき課題であるとの認識の下に行われなければならない」ことを基本理念とし、県、市町、県民、事業者、関係機関の責務を定めています。高齢者のみならず、すべての虐待は社会全体で解決すべき課題であります。県におかれましては、条例が掲げる理念を更に広げながら、報道に聞こえるような悲痛な事件が決して起きることのないよう、虐待防止により一層のご注力を頂けますよう要望を申し上げ、お尋ねいたします。

「県家庭における暴力及び虐待の防止並びに被害者の保護等推進条例」施行から約1年半が経過しましたが、その趣旨を踏まえ、県では、家庭内での高齢者の虐待防止、被害者の保護や支援に、この間どのように取り組んできたのか、その成果と課題も併せてお聞かせください。」

 

<答弁要旨:保健福祉部長>

「本県の高齢者虐待に関する調査では、施設従事者による虐待は、平成24年度が3件、平成25年度が3件、家族や親族等の養護者による虐待は、平成24年度が155件、平成25年度が149件となっており、全国的に虐待件数が増えている中、本県では横ばいの状況である。

虐待を受けている高齢者のうち、認知症のある方が、7割を占めているという全国調査の結果もあり、認知症高齢者は、記憶障害や判断力の低下等に伴う不安感や焦燥感から、徘徊などの行動障害を起こすことがあるため、施設従事者や養護者にあっては、認知症への対応に必要な知識や技術の不足に加え、介護の負担や心理的ストレスなど、様々な要因が重なりあって、虐待や不適切な介護が生じていると考えている。

高齢者虐待を未然に防止し、問題を深刻化させないためには、介護者の身体的、精神的な負担の軽減を図るとともに、高齢者や介護者が孤立しない支援体制を整備していくことが必要と認識している。

<答弁要旨:保健福祉部長>

認知症高齢者の地域での生活を支えるためには、地域包括ケアシステムの構築が重要であり、県では、これまでに、認知症を正しく理解し、認知症の方や家族を支援する認知症サポーターの養成、医療機関と地域包括支援センターの連携の推進役となる認知症サポート医の養成のほか、認知症地域連携パス「えがおの安心手帳」を作成して、認知症高齢者の医療・介護・生活等の情報を関係者が共有できるようにするなど、地域で認知症高齢者を支える体制整備を進めているところである。

さらに、県立医療技術大学が西予市と連携して取り組んでいる、地域包括ケアシステム構築に向けた人材育成プログラムの開発を支援し、システム構築に関わる人材育成や資質向上を図るほか、市町における認知症支援体制づくりのコーディネート役となる認知症地域支援推進員の配置を促進するなど、地域を支える有為な人材を数多く育成することで、多様な職種間のネットワークを強化し、認知症高齢者等が住み慣れた地域で安心して暮らしていける地域包括ケアシステムの構築に努めて参りたい。」

<答弁要旨:保健福祉部長>

「厚生労働省の平成25年度の調査では、虐待の発生要因として、教育・知識・介護技術等に関する問題が、66.3%と最も多く、次いで職員のストレス等の問題が26.4%となっており、人手不足の状態にあって、介護知識や経験が乏しい中、職員が過度な負担やストレスを抱えながら勤務していることが、虐待の背景にあると認識している。

このため、県では、高齢者介護の実務者や、その指導的な立場にある者に対して、対象者の習熟度に合った認知症介護に関する実践的な研修を実施しているほか、昨年度から施設の職員等を対象とした研修会を開催して、職員の介護力の向上を図っているところである。

また、人材不足に対しては、多くの事業所が処遇改善加算措置の適用を受けて、介護職員の賃金増につながるよう支援するとともに、地域医療介護総合確保基金を活用して、県福祉人材センターにおける人材マッチングや、キャリアアップ研修の支援、新人職員に対する指導担当者制度の導入など、介護分野への参入・定着促進に取り組み、人材の確保に努めて参りたい。」

<答弁要旨:保健福祉部長>

「福祉サービス第三者評価事業は、事業者が、自主的に第三者の評価機関による評価を受審し、結果を公表することにより、提供するサービスの質の向上を図るものであり、本県での平成26年度までの受審は127件、四国では1位の受審実績となっている。

受審した事業所からは、「自分たちが日頃行っているサービスを見直す良いきっかけになった」、「職員の意識改善につながった」、「職員間の認識のズレ等がはっきり見える形となった」等の声が寄せられ、事業所の意識改革などの成果につながっている。
一方で本事業は、あくまでも事業者に自主的な受審を促す制度であり、受審にあたっては30万から60万円程度の費用を要することから、本県でも高齢者施設等は39件にとどまるなど全国的にも受審が広がりにくいことが課題であると認識している。

高齢者虐待の未然防止を図るためにも、事業者が本事業を積極的に活用し、職員の処遇改善を含めたサービスの質の向上に取り組むことが重要であることから、県としては、引き続き、本事業の成果の周知や、実地指導監査等での受審指導に積極的に取り組み、高齢者が安心して生活できる施設環境づくりに努めてまいりたい。」

<答弁要旨:保健福祉部長>

「家庭における暴力や虐待をなくしていくためには、条例にあるとおり、県民一人一人が社会全体の問題であるとの認識を持ち、地域社会、市町、県、行政機関、民間団体などが相互に連携して、県民総ぐるみで防止及び被害者等の支援に取り組むことが重要である。

このため、県では、リーフレットやホームページを活用して、虐待防止や被害者保護への県民の理解促進のための啓発を行っているほか、介護者の負担やストレスが虐待の主な要因であることから、認知症に関する相談窓口の設置や、認知症の方本人の想いや家族の不安などを語り合う交流会を開催しており、交流会の参加者からは、孤立感や負担感の軽減につながったとの意見が出されるなど、一定の効果を上げているところである。

なお、介護保険サービスを受けていない場合や相談に至らない事例は、顕在化しにくいといった課題もあることから、家庭内の虐待をいち早く察知する介護支援専門員や民生児童委員等と連携して、事案の早期把握に努めているところであり、引き続き、住民等への一層の普及啓発を行うとともに、県民総ぐるみによる高齢者の虐待防止、被害者支援に努めて参りたい。」

投稿者
木村誉
投稿時刻
22:48
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