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2007年 6月定例会(6/27)

テーマ未来世代対策

社会的ひきこもりについて(2007年6月定例会)

社会的ひきこもりについて - 質問 -

(拍手)皆さん、おはようございます。

公明党・新政クラブの木村誉でございます。

私は1年生でありますので、加戸知事初め理事者の皆様、先輩議員の皆様を前にいささか気おくれの感がいたしますが、多くの県民の皆様なかんずく庶民の皆様の心と目線に立って、そのお役に立つことが県政発展につながるものと確信し、そうした思いを持って働いてまいることをまず最初にお誓い申し上げたいと思います。

「苟に日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり」とは、有名な「大学」の一節でありますが、この金言は、昨年、私が退社をする際、勤めていた企業の創業者であり会長である稲垣正夫氏からいただいたはなむけの言葉であります。政治の道を精進して進みなさいという励ましでありました。私は、なかなか政治の光が当たりにくい方々、いろんな分野における弱者の方々、そうした方々にきちんと光を当て、そして報われる愛媛にしていくとともに、さらに将来にわたって我が愛媛が発展し、明るいものになるよう精進してまいりたい、このような決意で質問に移らせていただきます。

最初に、社会的ひきこもり問題についてお伺いをいたします。

私たちの身近に、このような方はいらっしゃいませんでしょうか。もう40歳にもなるのに、仕事もせずに自宅でぶらぶらしている。隣の家は年がら年じゅう、しかも夜中じゅう電気がついていて、まるで昼と夜が逆転したような生活だ。たまに大きなどなり声や物音が聞こえてくる。家庭内暴力で母親がいつも疲れ切っている。実はこれ県内に実際にあるお話で、社会的ひきこもり問題を抱える御家庭の苦悩の一場面なのであります。

正直に申しまして、私はこの問題の深刻な事態について最近まで知らなかったのでありますが、ことし3月、ある御婦人が私を訪ね、その叫びにも似た苦しい心情を訴えられて初めて知るところとなったわけでございます。その際、埼玉新聞社発行の「ルポひきこもり」を手渡され、その日のうちにこれを一読いたしました。社会的ひきこもりの当事者と親との長年にわたる壮絶なかっとう、格闘と心身ともに崩壊寸前の苦悩の様子がありありと描かれ、その振り絞るような魂の叫びに私は涙を禁じ得ませんでした。愛と心のネットワークを力強く推進する加戸県政だからこそ、ぜひこうした苦しみの実態に光を当て、適切にして実行可能な対応を強く望むものであります。

さて、ひきこもりという語彙について、厚生労働省のひきこもり対応ガイドラインを参照いたしますと、「近年まで、「ひきこもり」といえば、統合失調症などの精神疾患のために、なかなか社会参加が出来ない人」のことを指しておったわけでありますが、そうではない、つまり狭義の精神疾患を有するために生じるのではないひきこもり状態を名づけて社会的ひきこもりとし、その概念の違いを区別しておるそうでございます。

また、その「社会的ひきこもり」につきまして、医学博士の斎藤環先生の定義によりますと、「20代後半までに問題化し、6ヶ月以上、自宅に引きこもって社会参加をしない状態が持続しており、ほかの精神障害がその第一の原因とはかんがえにくいもの」とあります。つまり社会的ひきこもりは、精神の障害ではなく心の問題なのであります。

この社会的ひきこもりの特徴は、問題が起こってから治療機関に相談に訪れるまでの期間が長く、また、回復までの期間が非常に長いということであります。親御さんが世間体を気にして家庭内でこの問題を処理しようとすること、当事者本人も治療に出ることを拒むことなどから、どうしても治療機関に相談に訪れるまでの期間が長くならざるを得ないのであります。長い方ですと、30年以上という例もございます。そうしたことを考えますと、その長きにわたる親御さんの心理的、肉体的あるいは経済的な御負担はいかばかりか、特に本人とのあつれき、夫の無理解、世間の白い目と言われる三重苦としてのしかかる母親の負担が言語に絶するものであることは容易に推察されるわけであります。そうした親御さんと当事者本人の心の痛みというものに寄り添いながら、質問に移りたいと思います。

初めに、県内の社会的ひきこもりの実態についてお伺いいたします。

現在、県内の社会的ひきこもり人口はどのくらいとお考えでしょうか。また、その年齢、性別などのデモグラフィック分布や東・中・南予の居住地域ごとの偏在性あるいは期間の長短といった具体的な実態についてお聞かせ願いたいと思います。

もし余りよくわからないということでありましたら、問題解決の第一歩としまして、県内の社会的ひきこもり実態調査が急務であると考えますが、いかがでしょうか。その調査方法と調査期限のめどをあわせて御提示いただけると幸いでございます。

続いて、県内の社会的ひきこもり家族の御要望の一部を御紹介させていただきたいと思います。

社会的ひきこもりで悩む親御さんの全国ネットワーク組織として、全国ひきこもりKHJ親の会という団体があります。愛媛でも、その支部が本年2月に立ち上がりました。KHJ愛媛県こまどりの会との名称で、現在約60家族、80名という構成規模でございます。

私は、この間、その定例会に2度ほど参加させていただき、また、個別に代表者、事務局の方々から、さまざまな行政への要望を伺ったわけであります。その中で、社会的ひきこもりの子息を持つ親御さんがまず初めに望むものは、行政の受け皿ということでございました。我が子がひきこもりを始めた際の親御さんの共通体験は、どこに相談すればよいかがわからないということでありました。県におきましては、その相談窓口は児童相談所であり、保健所であり、心と体の健康センターであるわけですが、これが利用者にとっては非常にわかりにくいということであります。

そこで、お伺いいたします。
社会的ひきこもりに関する受け皿はこちらですといった行政におけるワンストップ窓口の設置と、県民への周知徹底を御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。各市町ごとの設置が理想ですが、いずれにしましても、その窓口への御相談者のお申し出により、しかるべき行政サービスの紹介や、民間医療機関の情報やKHJ愛媛県こまどりの会のような当事者グループ、NPO団体などへのアクセスに便宜が図られれば、社会的ひきこもりの初期段階対応としてこれほど強いことはないのであります。ぜひ御検討をいただきたいと思いますので、御所見をお伺いいたします。

次に、社会的ひきこもり当事者の家族が要望する行政の対応インフラを、ハード、ソフト、ネットワークという3つの観点から順番に挙げさせていただきます。

まず、ハードの面におきましては、公的施設の利活用に便宜が図れないかということであります。と申しますのも、民間施設では、その使用料が負担となり、ひきこもり家族間の自助活動が経済的な理由において多大に制限を強いられるのであります。よりスムーズに進むよう、活動拠点として公的施設の無料あるいは優遇利活用の便宜は図れないでしょうか。

次に、ソフトの面におきましては、やはり人材の確保ということが一番強い要望として挙げられます。親御さんのお話によりますと、県内では、まだまだ社会的ひきこもり専門の医師、臨床心理士、保健師、訪問サポーターといった人材は多くないようであります。したがいまして、こうしたひきこもり対応が十分可能な専門スキルを持った人材の確保と育成についての御所見をお聞かせいただければと思います。

そして、ネットワークの面におきましては、県と市町の間、各市町と当事者家族の間における連携の強化が極めて重要と感じております。なぜならば社会的ひきこもり家族は、その家族内においても当事者と家族が分断され、さらに社会からも分断され、全く孤立しているという状況だからであります。広げていえば、それにプラスして医療機関、地域団体、学校とも適宜連携を整え、県を挙げて、地域を挙げての体制づくりといったものが真に望まれるものと考えますが、現時点でどのような連携体制がとられているか、あるいは今後、どのような体制を目指そうとされるのか、御所見をお聞かせください。

続きまして、社会的ひきこもり当事者の初期段階から回復段階までの経過に即して見てみたいと思

います。

まず、その初期段階におきましては、先ほど申し上げましたワンストップ相談窓口において、本人の状況をしっかり受けとめる体制づくりということが非常に重要でありますし、進行期におきましては、やはり専門スキルを持つ医療スタッフや施設と適切な治療というものが何といっても必要なわけでございます。

ところが社会的ひきこもりの場合は、注射をして投薬をして終わりといった一般的な治療とは異なり、カウンセリング、つまり対話の中身と質こそが治療という性格上、どうしても1回当たりの時間が長くなるわけであります。加えて、回復までの期間が何年にもわたるため、その間の経済的負担が重くのしかかってまいります。年金生活に入った親御さんの場合では、費用が賄えず治療が受けられないという事態も現実問題としてはあるわけでございます。

したがいまして、この進行期におきましては、医療機関あるいは専門スキルを持つ社会的ひきこもり専門の医療部門を公的に整備していくことが急務であり、経済的な負担の軽減といった措置も同時に必要であると考えますが、この点につきまして御所見をお聞かせ願います。

そして、最終段階の回復期におきましては、やはり当事者の自立を支援するためのサポートが必要と考えられます。現在、心と体の健康センターにおいて、社会的ひきこもり当事者や家族の座談会や交流会なども実施されておりますが、ひきこもりからの旅立ちをサポートするためには、これらの事業をさらに発展、拡充していくことが不可欠と考えます。

そこで、お伺いいたします。
社会的ひきこもり当事者の自立を支援するために、県として、今後、どのような取り組みを行っていくのか、現時点でのお考えをお聞かせいただければと思います。

以上、当事者の症状の段階ごとに必要とされる行政サポートについて要望を上げさせていただきました。着実に、漸進的に、そして適切な対策を強く念願するものであります。

私は、この社会的ひきこもりに関しまして、当事者を含む家族個々が解決できる領域をはるかに超え、社会問題であると認識しております。そして、現代社会や地域社会が青少年を通して生み出した一つの社会現象というふうに理解するならば、これは行政がリーダーシップをとりながら地域社会全体で取り組まなければならないものであると考えるのであります。多面的にして着実な行政対応インフラの整備により、県内に潜在するであろうこの問題で苦しまれている方々を顕在化させ、それに対するしかるべき治療が進み、克服が進んでいくよう粘り強く取り組んでいただきたいのであります。

愛知県では、「21世紀あいち福祉ビジョン」の中で、本年度よりひきこもり対策費が予算化され、その取り組みが飛躍的な前進を始めたようでございます。我が愛媛におきましても、大変厳しい財政状況の中ではありますが、でき得るべき最大の対応を切にお願いするものでございます。社会的ひきこもり当事者とその家族が、一刻も早くもとの笑顔を取り戻せるよう心より強く念願し、次の質問に移らせていただきたいと思います。

社会的ひきこもりについて - 答弁 -

答弁:保健福祉部長

木村議員にお答えをいたします。

社会的ひきこもりに関しまして、まず、県内の社会的ひきこもり人口などの具体的な実態はどうかというお尋ねでございました。

いわゆる社会的ひきこもりの実態につきましては、プライバシー等の問題から、対象者の把握が非常に困難でありまして、全国で41万世帯にひきこもり状態にある人がいるという厚生労働省の推計はありますが、県内における社会的ひきこもり人口など、具体的な実態は把握できていないところでございます。

社会的ひきこもりの対策を推進するに当たり、実態を把握する必要性は認識しておりますが、プライバシーの問題や調査方法などさまざまな課題がありますことから、他県の動向も勘案しながら、どのような実態把握が可能なのか、今後、検討してまいりたいと考えております。

次に、社会的ひきこもりに関する受け皿として、行政のワンストップ窓口の設置と県民への周知を検討してほしいがどうかとのお尋ねがございました。

社会的ひきこもりを含むひきこもりの相談窓口といたしましては、心と体の健康センターと保健所において、保健師及び精神科医による相談面接を実施いたしますほか、児童相談所で不登校の問題について相談に応じているところでございます。

ひきこもり支援は、まずは、御家族の相談から始まりますことから、現在、センターがひきこもりにお悩みの御家族等のためのワンストップ相談窓口としての役割を担っております。そのため、ホームぺージやリーフレットを活用して、ひきこもり等に関する相談窓口を広く県民に周知しているところでございます。

今後、ひきこもりに関する情報が一目でわかるよう、各相談窓口のほか、医療、保健等の関係機関や親の会、NPOなどに関する情報を、ホームぺージにより県民に一元的に提供することについても検討してまいりたいと考えております。

次に、社会的ひきこもり家族間の自助活動の拠点として、公的施設の無料または優遇利活用に便宜が図れないかとのお尋ねがございました。

厚生労働省のひきこもり対応ガイドラインでは、家族支援が最も重要であるとされておりまして、家族同士が悩みを打ち明けたり心をいやせる家族間の交流の場所が必要であると考えております。公的施設の活用についてでございますが、公的施設は、その設置者が独自に使用料を設定しておりまして、一律に無料または優遇利活用の扱いは難しいと考えておりますが、県有施設の中には無料または減免規定の適用が可能な施設もございます。なお、愛媛ボランティアネットでは、こうした自助団体等の活動支援のため、県内の公共施設の貸し館情報を提供しているところでございます。

次に、社会的ひきこもり対応の専門スキルを持った人材の確保と育成についてどのように考えているのかとのお尋ねがございました。

社会的ひきこもりを含むひきこもりに対しましては、心と体の健康センターがひきこもり支援のいわば中核として、精神科医、専門の臨床心理士、保健師により相談、面接に当たりますとともに、保健所では、地域における第一線の身近な相談機関として保健師による相談、面接に当たっているところでございます。

相談に当たる職員には、ひきこもりに関する複雑、多様な相談内容に対応できる知識やカウンセリング能力が必要でありますことから、職員の資質の向上の取り組みが不可欠であると考えております。このため、今後とも、相談に当たっているセンターや保健所、市町の職員及び医療や学校関係者等を対象に、研修等により資質の向上を図り、相談などの支援に適切に対応してまいりたいと考えております。

次に、社会的ひきこもり対策のネットワークについて、現時点でどのような連携体制がとられているのか。また、今後、どのような体制を目指すのかとのお尋ねですが、社会的ひきこもり当事者やその家族を支援するためには、木村議員お話のように、県、市町、医療機関、学校等が連携を密にして、地域を挙げた体制づくりが必要でございます。

心と体の健康センターでは、親の集いや他県の親の会との交流会の開催により、親同士の連携を図っておりますほか、保健所や関係機関からのひきこもり相談に応じるとともに、希望に応じて専門医療機関を紹介するなど、個別相談を通じた関係機関との連携に努めているところでございます。

今後は、これまでの相談を通じた連携を強化いたしますとともに、そのネットワークをさらに広げ、行政担当者、精神科医、ケースワーカー、臨床心理士等のメンバーから成るネットワークの構築についても検討してまいりたいと考えております。

最後に、社会的ひきこもり専門の医療部門等を公的に整備していくことが急務であり、経済的負担の軽減などの措置も必要であると考えるがどうかとのお尋ねがございました。

ひきこもりの原因はさまざまでありますことから、心理的、医療的側面などからケアをする必要があります。心と体の健康センターにおいては、精神保健に関する相談指導のほか診療行為も行っておりまして、ひきこもりについて、心理、医療の両面から対応しているところでございます。センターでは、精神科医、保健師、心理判定員と多様な職種の人材を配置するとともに、さらに本年度は保健師を2名増員するなど体制を強化したところでありますが、これは社会的ひきこもりへの対応にも資するものでございます。

また、経済的負担の軽減に関し、診療に係る自己負担分の減免につきましては、現下の厳しい財政状況等もあり困難であると考えておりますが、センターにおいては、各種相談や継続的なカウンセリングを無料で実施しているところでございます。

以上でございます。

答弁:加戸守行知事

県議会本会議に初登壇されました木村議員の質問に答弁いたします。

社会的ひきこもりに関しまして、たくさんの御質問ございましたが、7問目、社会的ひきこもり当事者の自立を支援するために、県として、今後、どのような取り組みを行っていくのかとのお尋ねがございました。

社会的ひきこもりの問題は、木村議員お話がございましたように、当事者を含む御家族の個人的な問題にとどまらず、社会的な問題であると認識いたしておりまして、当事者本人が、再び就学あるいは就労し社会に参加できるよう支援体制を整備し、地域全体で対策に取り組むことが重要と考えております。

このため、県では、心と体の健康センター、保健所、児童相談所において、御本人や御家族からのさまざまな相談に対応いたしますほか、当事者の集いと親の集いの開催や関係者への研修会を実施するなど、社会的ひきこもりを含むひきこもり当事者の自立支援に向けた取り組みを行っております。また、一般県民を対象に講演会を開催するなど、ひきこもりについての啓発も行っております。

今後とも、県民がひきこもりについての理解を深めるための講演会等を開催するほか、センター等の相談窓口について、県民への周知及び相談対応の充実に努めますとともに、ひきこもり当事者の自立支援に向けた集い及び研修会の充実を図ることとしておりまして、市町、医療機関等の関係機関と連携協力しながら、ひきこもり対策を総合的に推進してまいりたいと思っております。

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