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2012年 12月定例会(12/6)

テーマ未来世代対策

いじめ問題について(2012年12月定例会)

いじめ問題について - 質問 -

次に、いじめ問題についてお伺いします。

昨年10月、滋賀県大津市の中学2年生がいじめを苦に自殺するという大変痛ましい事件が発生しました。また、一昨年6月には川崎市の中学校において、同年10月には群馬県の小学校において、さらに本年9月には兵庫県の高校と札幌市の中学校において同様の事件が発生するなど、いじめによる子供たちの自殺が後を絶ちません。亡くなられた児童生徒の御冥福を心からお祈りいたしますとともに、改めて私たち大人が覚悟を決めていじめ問題の解決に向け、取り組まねばならないと思います。

「教室の悪魔」の著者である児童心理司山脇由貴子氏によりますと、いじめというのは特定の個人に起こる問題ではない。いじめられる側に原因があるからいじめられるのでもない。誰でも被害者になり得るし、誰でも加害者になり得る。いじめは循環する。ささいなきっかけでそのターゲットは変わり、次々と移行していくとしています。特定の問題児がいて、いじめられっ子がいて、傍観者がいてという構図で捉えるのは間違いと指摘した上で、さらに、不特定多数に循環しながら拡散する現状を捉え、「いじめは心の疫病である。大人の見えないところで子供たちの間に伝染していくウイルスである」と論じておられます。つまり、いじめ問題の根本的解決に向けて今求められるのは、表面化したいじめに対し、いじめる個人を指導するといった従来の次元から、目に見えないウイルス、つまりなかなか表面化しないいじめに対し、社会全体でどう予防するかという認識への転換であるとの山脇氏の指摘は極めて重要な視座でありましょう。氏は続けて、「このウイルスは、ウイルスに侵されてない人間だけがダメージを受けるという特徴を持つ。ダメージを受けないためには感染しなくてはならない」「だから、子供たちはダメージを受けないために、被害者にならないためにウイルスに感染して加害者となっていくのだ」と述べておりますが、子供たちの気持ちに立つと本当にやり切れません。

同著で紹介される、氏が現場で見てきたさまざまないじめの事例は、どれも大津市と同様とても耐えられないほど陰湿で残酷です。大津市の事件では、学校、教育委員会、警察が幾つものサインを見逃したことが最悪の事態に至った背景とされていますが、特に学校、教育委員会の隠蔽体質の問題が大きくクローズアップされました。いじめの存在を裏づける一定の情報が集まっていたにもかかわらず、教育委員会を初めとする学校側の隠蔽体質により、一つ一つの段階できちんとした対応ができていなかったというのです。問題を隠したり正当化するのは保身という大人の論理であり、そのことが今回子供たちを自殺に追い詰めたのだとすると、いじめ以上に隠蔽こそ悪ということを今こそ大人は猛省し、自覚しなくてはなりません。

そこで、お伺いします。

今、問題となっている教育現場の隠蔽体質について、本県の状況はどうか。また、全国で相次ぐいじめによる児童生徒の自殺事件を踏まえ、この間、緊急対策を含め、本県としてどのような対策に取り組んできたのか御所見をお示しください。

一方、夜回り先生こと水谷修氏は、いじめを防ぐための方法について、大要次のように述べられています。いじめは、基本的人権を侵害する重い罪という考え方を社会全体で共有することが大事だ。そのためには、質の高い人権教育を行う必要があるが、今の文部科学省には、いじめは人権侵害だという観点が抜け落ちているとして、法務行政との連携を主張するとともに、たたく、お金を強要する、けがをさせる、あるいは死ねと言う、これは刑法犯罪であり、文部科学省の管轄で扱える問題ではないとして、警察行政との連携も求めています。水谷氏ならではの示唆に富む指摘であり、そのためには国全体がいじめに関して繊細になっている今がチャンスという氏の主張に、私も全く同感であります。

そこで、お伺いします。

いじめ問題の本質を基本的人権の侵害と位置づけると、その解決には、水谷氏が指摘されるように、教育委員会だけでなく法務機関や県警、さらには地域を巻き込んだ形での連携が必要であり重要と思いますが、本県の現状を含め、御所見をお示しください。

次に、いじめ対策で成果を上げる横浜市の事例に触れてみたいと思います。同市では、平成22年度からいじめなどの問題行動に専門的に対応する児童支援専任教諭の配置事業を市独自で立ち上げました。専任教諭は、昨年度で全345市立小学校中140校に配置され、授業時間を週12時間以内に抑えることで、いじめなどの問題に集中的に対応しているといいます。市教育委員会によりますと、昨年度の全市立小学校におけるいじめの認知件数は、専任教諭配置校が1校当たり6件なのに対し、非配置校では1校当たり2.4件と、実に2.5倍も差が開いたそうです。また、いじめの解消率についても、配置校は、非配置校より5.4ポイント高い95.7%であったそうで、市教委はこの児童支援専任教諭の効果について、担任が問題を抱え込まず早期に相談していることがいじめの認知件数の多さにつながっていると分析しています。専任教諭により認知件数が格段にふえ、早期の対策が可能となり、解消率が向上したということから、私は同市の取り組みを踏まえ、いじめ対策の人的資源の拡充にこそ着目すべきと考えます。教員にかかる負担の限界が懸念される今、行政だけで拡充が困難であるなら、例えば地域にお願いできる部分はお願いし、あるいは第三者機関を設置して御協力をいただくなど、教育現場での負担を広く地域・機関で分かち合い、教員が安心して本来業務に取り組める環境整備も同時に求められると思うからであります。

そこで、お伺いします。

県では、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの派遣を初め、学校現場への人的支援に取り組んでおられますが、現時点における人的支援の充足状況について御所見をお示しください。

また、横浜市の児童支援専任教諭配置事業が成果を上げていることから、本県でもいじめ対策専任スタッフを全ての学校に配置できるよう取り組んでいただきたいと思いますが、あわせて御所見をお示しください。

いじめ問題について - 答弁 -

答弁:教育長

いじめ問題について、3点の御質問がございました。

1点目は、学校、教育委員会の隠蔽体質に係るお尋ねでございます。

県内の各学校では、信頼される開かれた学校運営に積極的に取り組んでおりまして、いじめ問題に対しても、児童生徒の人権に十分配慮しつつ、保護者や地域、関係機関等との情報共有を図りまして、ネットワークを生かして適切な対応に努めております。

市町教育委員会につきましても、ことし8月に実施されたいじめに関する緊急調査で、いじめを隠蔽することなく学校支援等に対応していることが確認されておりますほか、いじめ問題の隠蔽等に係るトラブルの報告も受けていない状況にございます。

県教育委員会では、いじめの早期発見や早期対応、未然防止を図るために、各種相談活動の充実や関係機関の連携体制の整備、実践的な調査研究などの対策を実施しておりますが、大津市の事件を踏まえまして、改めていじめ問題への取り組みの徹底を通知いたしますとともに、夏季休業中の各種研修会におきまして、教職員やスクールカウンセラー等6,300名余りの教育関係者に対しまして、取り組み状況の再点検を指導したところでございます。

さらに、先月27日付で文部科学省から緊急調査を踏まえた取り組みの徹底について通知があり、市町教育委員会や学校に周知をいたしましたが、この中でも、いじめを隠すことのないよう、学校評価や教員評価に当たっては、いじめの早期発見や、発生した際の迅速かつ適切な実態把握や対応ができているかなどの点を評価するように指導したところでございます。

2点目は、いじめの本質を基本的人権の侵害と位置づけると、法務機関や県警、地域との連携が重要と思うが現状はどうかとのお尋ねでございます。

本県におきましては、いじめは重大な人権侵害であるとの認識のもと、平成19年度からいじめ問題への対応を人権教育課が総括し、関係機関との連携・協力関係を構築して、人権尊重の理念に立ったいじめ対策に取り組んでおります。

具体的な連携体制といたしましては、愛媛県いじめ問題連絡協議会を設置いたしまして、県、市町教育委員会、学校が一体となっていじめ問題の啓発や対策の普及を図りますとともに、全県レベルの児童生徒をまもり育てる連絡会や、教育事務所単位の連絡会議を開催いたしまして、警察やPTA、公民館等の参加を得て、いじめの予防や早期発見等について情報交換や研究協議を行いますほか、学校現場で対応困難な事案に対しては、医師や弁護士、警察関係者等をメンバーとする学校トラブルサポートチームを編成し、原因調査や解決支援に努めているところです。

なお、特に警察との連携では、児童生徒をまもり育てるサポート制度に関する協定を締結いたしまして、緊密に情報交換を行っておりますが、いじめの悪質化に対応し、今回、市町教育委員会等に対しまして、犯罪行為と認められるときは、学校における指導を前提に速やかに警察に相談をするとともに、児童生徒の生命や安全が脅かされるような事案では、直ちに警察に通報し、協力して対応するように徹底したところでございます。

3点目は、スクールカウンセラー等の人的支援についてのお尋ねでございます。

県教育委員会では、教育相談の充実をいじめ対策の重要な柱の1つとして位置づけておりまして、現在、臨床心理士等からなるスクールカウンセラーを小学校14校、中学校79校に、退職教員等を活用した本県独自のハートなんでも相談員を小学校73校、中学校41校に配置し、両者で小学校の27%、中学校の90%をカバーいたしますほか、13市町に社会福祉士等の資格を持つスクールソーシャルワーカーを配置し、児童生徒の問題行動の早期発見や心のケアに努めております。また、対応困難な事案の発生が懸念される場合には、医師、弁護士、警察関係者等の専門家を派遣し、学校を支援しているところでございます。

なお、木村議員お話のございました児童支援専任教諭につきましては、いじめ対策を担うマンパワーを強化する上で有効であると考えておりますが、本県では全小中学校に生徒指導主事を配置いたしますほか、いじめや不登校の状況に応じて、児童生徒の支援を充実するために、小学校78校、中学校77校に国の加配教員を、小学校30校に県独自の非常勤講師を配置しておりまして、今後とも、スクールカウンセラー等の配置率を高めますとともに、教員についても国に加配要望を行うなど、人材のさらなる拡充に努めまして、いじめ問題への早期対応と教育現場の負担軽減に取り組んでまいりたいと考えております。

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