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2016年 2月定例会(3/7)

テーマ地域経済対策

県産農産物の輸出戦略について(2016年2月定例会)

県産農産物の輸出戦略について - 質問 -

さて、農林水産省が先月発表した平成27年農林水産物・食品の輸出実績によりますと、わが国の昨年の輸出額は前年比21.8%増の7,452億円、3年連続で過去最高を更新したとのこと。

政府は、平成28年の目標としていた7,000億円を早くも達成し、このまま推移すれば平成32年の目標である1兆円の前倒し達成も十分可能であり、更なる輸出拡大に向けて意気盛んといった状況であります。

輸出好調の背景には、昨年までの円安基調や、「和食」ブームを受けての日本食レストランの急増などが挙げられておりますが、為替も、ブームも、絶えず変動するものであり、そうした要因による後押しがあったことに安閑とするわけにはまいりません。今年に入って続く円高局面や、大筋合意を受けてこれからが正念場であるTPP発効までの諸課題に対しどのように対峙していくのか、国県それぞれに、これまで以上の対策が求められてくると思います。そこで、本県ブランド農産物の輸出に関して、いくつかお伺いいたします。

直近の平成26年の本県農業産出額は1,186億円。カテゴリー別に見ると最も大きいものは果実で452億円、次いで野菜198億円、豚136億円、米126億円と続きますが、本県関与による平成26年の輸出額は1,994万円にとどまっていますので、実際そのほとんどは国内向けであったかと思われます。
しかし、今後、国内人口の持続的減少は避けて通れず、このままではジリ貧となることは明らかであり、それぞれの産出額の維持向上を図るためには“輸出戦略”がより重要となることはいうまでもありません。

そもそも農業は、不確実な“自然”というリスクを内包している点で他の産業とは全く異なります。農業は、引越しのできない産業であるからです。加えて、日本の場合、限られた作付け環境の下に成り立つ産業であり、地域の気候風土に適したものの中から、その土地その土地に根付いた歴史や文化、環境の保全といった総合的な観点から、将来にわたり生業が可能な範囲においてのみ持続することができるのであります。

それらをすべて満たしたものが、本県の場合、例えば柑橘であり、40年連続で収穫量全国第1位を誇り、圧倒的な“かんきつ王国”たる所以も、そこにあります。

先日、県総合園芸振興審議会で検討された、来年度から10年間の果樹農業の振興方針となる県果樹農業振興計画(案)によりますと、平成37年度の柑橘生産量目標は、平成25年度実績比で2%増の24万4000t。

約10年で2%増というこの数字をどう見るかは、人により異なると思いますが、高齢農家の引退に見合う就農者確保の問題やTPPの影響等を考慮すると、私はかなり意欲的な目標であると考えます。

一方で、約10年で2%増ということは、付加価値が変わらなければ現状維持と同義であり、成長とはいえません。農業を成長産業とするためには、6次産業化も含め、1つ1つの品目を磨き、これまで以上に付加価値を上げながら、新市場開拓を含めた総合力で農業産出額の向上を目指す以外ありません。

そこで、お伺いします。

私は、本県ならではのブランド農産物の創出により付加価値の向上を目指す“クオリティ農業への転換”が今、求められていると思いますが、今後の輸出戦略といった観点からこのことについて、県はどのように認識し、どう取り組んでいくのか、ご所見をお示しください。

さて、ブランド化による付加価値の向上を目指す上で、例えば和牛は、海外で高級ブランドとして認知されており、欧米のスーパーでは現地の一般的な牛肉と比べ7~8倍といった高値で売られる例もあるといいます。これは、日本の畜産農家が丹精込めた和牛の品質、安全性、美味しさというものに対して、欧米の一般牛肉の何倍もの価値が認められているということに他なりません。

このことは牛肉に限らず、本県農産物すべてにおいて目指すべきブランディングの方向性でありましょう。

一方、二匹目のドジョウではありませんが、ひとたび人気ブランドが登場すると、それに便乗した“まがい物”などが追随する、ということも世の常であります。ましてや、異種格闘技のようなシビアな戦いを強いられる海外市場という舞台におきましては、そうした勢力から本県ブランド農産物をどのように差別化し、守り、比較優位性を保つかということが、より重要になってまいります。

そうした観点から農林水産省では、昨年6月、地域で育まれた伝統と特性を有する農林水産物や食品の名称を“ブランド”として国が保護する“地理的表示保護制度GI”を立ち上げました。GIに基づき登録された名称や、GIマークの不正使用に対しては、国が、表示の除去や抹消を命令したり、罰則を科すことを可能としています。

国では今後、海外におけるGIマークの商標登録や、国際間での保護の枠組み作りを通じて、海外においても、わが国の真正な特産品であることが明示され、差別化が図られるよう取り組んでいくとしております。

その第1弾として、昨年、兵庫県「神戸ビーフ」や北海道夕張市の「夕張メロン」など7件が登録され、先月2日には、本県の西予市蚕糸業振興協議会が申請していた「伊予生糸(いと)」がGIに登録されることとなりました。生産者をはじめ、地元の方々に、心からお慶び申し上げたいと思います。

西予市の三好市長は、「今後さらに養蚕農家の育成に注力するとともに、東京五輪の選手団のユニフォームにも使ってもらえるよう働きかけたい」と述べておられますが、県としてもぜひ最大限のバックアップをお願い申し上げたいと思います。

そこで、お伺いします。

県は、本県ブランド農産物の輸出戦略を考える上において、地理的表示保護制度GIをどのように認識し、「伊予生糸」に続く今後の登録に向けて、どう取り組んでいくのか、ご所見をお示しください。

次に、輸出拡大を目指す上では、食品製造でも求められている世界標準規格であるISO、食品の衛生管理方法を定めたHACCP、イスラム法で食べることを許された食材を規定するハラール、更には国際的な農業生産工程管理を定めたグローバルG.A.Pなど、様々な国際標準や相手国のルールというものを考慮しなければなりません。

このうち、私は、農産物や畜産物に関しては、特にグローバルG.A.PとHACCPが重要と考えており、その取得に向けた取り組みは、今後ますます重要度を増してくると思うのであります。

そこで、お伺いします。

本県農産物の輸出拡大を目指す上で、県は、各種の国際認証をどのように認識し、今後、生産者、加工業者などの関係団体に対してどのように機運醸成を図っていくのか、本県における現在の取得状況も併せてお聞かせください。

県産農産物の輸出戦略について - 答弁 -

答弁:中村時広知事

人口減少による国内市場の縮小や、TPP協定等の国際環境の変化などに的確に対応して、産地間競争に打ち勝っていくためには、これまで以上に、高品質化やブランド化を追い求めるとともに、国内外への販売拡大に戦略的に取り組む必要があると考えます。

県においては、現在、経済発展が著しい東アジアや東南アジアの富裕層を中心に積極的な営業活動を展開しており、先日のマレーシアでの「愛媛フェア」においても、新戦力の「愛媛クィーンスプラッシュ」や「せとか」などの高級柑橘が即完売したほか、県産果実を使ったゼリーやジュースに人気が集まるなど、安全・安心で高品質産品へのニーズの高さを私自身改めて実感したところでございます。

今後とも、試験研究機関の有する高い技術力を駆使し、紅まどんなや紅い雫に続く、高品質のオリジナル次世代品種の開発をはじめ、生産者や関係団体等と連携して、ICTの活用などの先進栽培技術の導入や6次産業化の促進など、本県農産物のさらなる高付加価値化に努めながら、攻めの姿勢による国内外への販路開拓と実需の創出に全力で取り組んで参りたいと思います。

答弁:農林水産部長

地理的表示保護制度は、地域のブランド産品の品質に国がお墨付きを与えるものであり、知名度アップや差別化による価格への反映が期待できますことから、販売戦略の新たな切り口となるほか、農山村地域の活性化や伝統の継承等に有効なツールとして積極的に活用すべきと考えています。

また、商標権のように更新の必要がなく、今後、諸外国との協定により相互に保護する制度が整備されれば、登録標章いわゆるGIマークを使用することで、真正なジャパンブランドとして海外市場での差別化や競争力の強化が図られるなど、輸出促進にもメリットが見込まれるところでございます。

県としては、「伊予生糸」が本県で初めて登録されたことから、関係市町や団体等と連携しながら、様々な機会を活用した情報発信や販路開拓等に取り組みますとともに、引き続き、生産者や関係団体等に対する制度のさらなる周知や対象産品の掘り起しに努めて参りたいと考えております。

答弁:農林水産部長

グローバルGAPやHACCP等の農畜産物に係る国際認証につきましては、食品安全や環境保全等への配慮を背景に、国際取引の基準として、また、大手流通事業者等から取引条件として求められる事例がみられますほか、東京オリンピックでの食材調達の条件の一つとして検討されるなど、農産物の有利販売や輸出促進を図りますためには、これら国際認証の取得促進は極めて重要な課題と認識しているところでございます。

また、国内基準のGAPについては、26年度末で県内の13の産地が取得しているものの、認証の取得、更新に係る多額の経費負担や手続きの煩雑さなどから、グローバルGAPにつきましては柑橘やキャベツ等の2件にとどまっているほか、畜産施設に係るHACCPについては今のところ導入が進んでいない状況にございます。

このため、県では、生産団体等と連携しながら、GAPに係るセミナーの開催や関心の高い産地に対するコンサルタントの派遣などによる機運醸成に努めますとともに、HACCPの導入についても、関係団体と協議を進めるなど、引き続き、認証取得に前向きな産地等の主体的取り組みを支援して参りたいと考えております。

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