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2012年 2月定例会(3/7)

テーマその他

動物愛護について(2012年2月定例会)

動物愛護について - 質問 -

最後に、動物愛護についてお伺いいたします。

本年、愛媛県動物愛護センターは設立10周年を迎えます。「人と動物が共生する豊かな地域づくり」を目指しての関係各位の御尽力に対し、改めて敬意を表したいと思います。

議員という仕事柄、日ごろ、さまざまなお宅にお伺いいたしますが、犬や猫を飼われている御家庭が本当に多いなというのが実感でございます。どれくらい多いか調べてみたところ、一般社団法人ペットフード協会によりますと、2011年10月現在、全国の犬の飼育頭数は約1,193万頭、猫の飼育頭数は約960万頭、合計約2,153万頭と推計されるそうです。これを直近2010年の全国世帯数約5,184万世帯で割ると41%、つまり約4割の世帯で犬か猫が飼われているという計算になり、年齢別で最も多いのが50代で、次いで60代だそうで、なるほどそのとおりとうなずくばかりであります。

また、訪問先でよく耳にするのが、「〇〇ちゃんは家族の一員」というせりふです。飼い主の気持ちに立てば、〇〇ちゃんは動物にあらず、ペットにあらず、かけがえのない家族なのです。そうした動物愛護の立場に立つと、毎年多くの犬や猫が殺処分されるという現実は、耐えられないほどつらいものがあります。実際、私も過去2回、センターを視察いたしましたが、処分を待つ犬や猫がこちらを見るまなざしと鳴き声は、今も脳裏から離れません。助けてという叫びに聞こえ、耐えられませんでした。一方、そのとき初めて、日々そうした任務を担う職員の御苦労にも気づかされました。

この間、動物愛護者から寄せられた、一つでも多くの命を救ってほしいという思いと、一つでも多くの命を救いたいという職員の願いも含めてお伺いいたします。

初めに、県動物愛護センターにおけるこの10年間の犬と猫の殺処分数ですが、当局の調べによりますと、直近2010年の犬猫の殺処分数は5,514頭、その割合は、おおむね犬が3分の1、猫が3分の2とのことで、後ほど触れますが、猫が圧倒的に多いというのが現状です。

10年間で見ると、猫は4,000頭で横ばいの推移であるのに対し、犬は毎年減り続け、ピーク時に比べ約3分の1の水準となっており、犬猫合計数では、2006年から毎年着実に減少を続けています。

実はこの2006年は、動物愛護の観点から重大なエポックがありました。それは、前年の動物愛護法改正を受け、環境省から全国の自治体に向けて、引き取られて殺処分される犬猫の数を10年間で半減せよとの具体的な目標数値が掲げられたことです。このことは動物愛護者にとって朗報ですし、センター職員にとっても励みとなる追い風であったと思います。

殺処分の削減については、2010年、日本動物大賞を受賞した熊本市動物愛護センターのいわゆる熊本方式と呼ばれる殺処分ゼロを目指した取り組みが有名ですが、先日、藤崎童士氏の「殺処分ゼロ」を読みました。1998年には年間約1,000頭あった犬の殺処分数を、わずか12年でほぼゼロにすることに成功し、猫の殺処分数も、2002年の610頭から2009年には3頭までに激減させた熊本市の軌跡を描いたものですが、それは12年前、犬殺し、迷惑施設とやゆされていたセンターに着任した1人の所長が、もう犬も猫もこれ以上殺したくない、夢物語と言われようが、無理と言われようが、殺処分ゼロを目指す、そのために徹底して嫌われる行政になると決意したところから始まります。その道のりの厳しさは例えようもなく、実際は修羅場の連続であったに違いありません。

その熊本方式の特徴は、嫌われる行政になる、市民等と協働する、新しい飼い主を探すという3点に集約されますが、そのすさまじいほどの徹底ぶりが不可能を可能にしたと実感させられました。

考えてみますと、殺処分ゼロは、センターに持ち込まれる犬や猫がなくなればおのずと実現できるわけですが、実際、これまでのところ、持ち込みがなくなることはありません。持ち込まれる主な理由は、迷子、野良犬・野良猫、飼い主の飼育放棄に大別されます。

順に見ていきますと、まず迷子ですが、私のもとにも、これまで必死で探したが見つからず、結局殺処分されていた、〇(〇(ちゃんを返してほしいという悲痛な声が少なからず寄せられています。飼い主にはいたたまれない悲劇ですが、迷子になっても犬猫の身元が確認できる仕組みさえ確立できれば解決可能な問題とも言えます。

その最も確実な方法は、電子リーダーで飼い主情報がわかるマイクロチップですが、全国の普及率はいまだ10%にも満たないというのが現状です。最大のネックは高額なチップの注入料金と言われていますが、普及を拡大させることで料金を下げることは十分に可能だと思います。飼い主に対して法的に義務を課すことが困難であっても、取り返しのつかない事態を回避するためには、さらなる理解促進が求められるでありましょう。

もう一つは迷子札です。マイクロチップが電子なら、こちらはアナログの迷子札。犬や猫の名前と連絡先を書いた命の守り札です。熊本市では、迷子札をつけよう100%運動を展開したところ、斬新なポスターやPRカードが、動物病院はもとより、Jリーグのロアッソ熊本や運送会社など、幅広い分野にスポンサーが広がり、市内じゅうあまねく見られるようになって大いに功を奏したと伺っています。

そこでお伺いいたします。

迷子になっても犬や猫が飼い主のもとに無事帰れるよう、マイクロチップと迷子札装着の普及を強力に推進するとともに、市町とも連携しながら殺処分までの期間を可能な限り延長し、飼い主探しにもより積極的に協力すべきと思いますが、今後、県は犬猫の迷子対策にどのように取り組まれるのか御所見をお聞かせください。

次に、野良犬・野良猫ですが、もとをたどれば、これは飼い主の飼育放棄につながる話でもあります。モラルの高い終生飼育を実践する飼い主にとっては全くもって心外な話ですが、野良犬・野良猫による鳴き声がうるさい、怖い、ふん尿で臭い、畑を荒らすといった苦情が絶えないというのが現実であります。こうした野良犬・野良猫の拾得と飼い主の飼育放棄による引き取り率は、センターに収容される個体数全体の実に約85%を占めます。

言うまでもなく、犬も猫もみずから繁殖をコントロールすることはできません。特に猫は、1年に2回から4回、1度に10匹近く出産するため、ほうっておくと瞬く間に繁殖してしまいます。この10年間、猫の殺処分が横ばいでなかなか減らないのは、猫特有の旺盛な繁殖力にも起因すると言えるでしょう。

愛媛県動物愛護管理推進計画のパブリックコメントにも、不妊去勢手術を促進するため、市町、獣医師会、愛護団体等と連携し、不妊去勢手術の助成金制度の導入を働きかけるべき、また、飼い主のいない猫に対する避妊去勢手術を推進するため、公共施設、動物病院、動物取り扱い業者、動物関連商品販売業者に募金箱を設置し、募金制度を導入してはどうかなど、行政のリーダーシップによる犬猫の不妊・去勢の推進を求める声が多く寄せられています。

そこでお伺いします。

現在、犬猫の不妊・去勢手術に対する助成制度を設けているのは、松山市・今治市・東温市・砥部町・松前町の3市2町ですが、こうした地域格差を解消し、パブリックコメントにもある多様な主体と連携しながら、犬猫の不妊・去勢施策を推進、強化すべきだと思いますが、御所見をお聞かせください。

さて、私は、殺処分の削減には明確な数値目標が不可欠であると思いますが、2008年から10年間の取り組み内容を定めた愛媛県動物愛護管理推進計画では、殺処分数の数値目標が見当たりません。計画策定前のパブリックコメントでは、今後、各方面からの分析を行い、設定したいと回答されておられましたが、ぜひ明確な数値目標をお示しいただきたいと思うのであります。

そこで、この10年間のセンターの御努力に改めて敬意を表し、かつすべての動物愛護者にエールを送る思いで私が申し上げたいことは、「目指せ、犬猫殺処分ゼロの愛媛」ということであります。言いかえると「愛媛・犬猫持ち込みゼロ作戦」。言うまでもなく、これは県民の皆様の御理解と御協力があって初めて可能であり、つまるところ、行政だけでは不可能でありましょう。

そこでお伺いいたします。

私としては、まずセンターを中心に、動物愛護にかかわる官民幅広いメンバーが一堂に会するプラットホーム、(仮称)愛媛県動物愛護推進協議会を設置し、それぞれの思いや利害を乗り越え、できることを一つずつ積み重ねながら「愛媛・犬猫持ち込みゼロ作戦」を展開し、ぜひ「犬猫殺処分ゼロの愛媛」を実現していただきたいと考えるのでありますが、御所見をお聞かせください。

以上で私の質問を終わります。 御清聴いただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)

動物愛護について - 答弁 -

答弁:保健福祉部長

次に、動物愛護について2点御質問がございました。

1点目は、犬猫の迷子対策についての御質問でございますが、県では、迷った犬猫が1頭でも多く飼い主のもとに帰ることができますように、動物愛護センターのホームページに迷い犬ねこ情報を開設いたしまして収容した犬猫の情報を掲載し、環境省の収容動物データ検索サイトからも広く閲覧できる環境を整備いたしますとともに、今年度からはセンターでの収容期間を1日延長いたしまして、7日以上の収容期間を確保したところでございます。

また、狂犬病予防法において義務づけられております犬の身元証明となる鑑札や注射済票の装着を促進いたしますとともに、木村議員お話のございました迷子札やマイクロチップにつきましても、センターにおける迷子札の手づくり教室や県獣医師会の協力によるマイクロチップの装着実演、動物愛護推進連携協定を締結した金融機関でのパネル展の開催等を通じまして、飼い主への啓発や普及拡大に努めているところでございます。

こうした中、県内市町におきましては、鑑札等の装着率の向上を図るために、子犬の形やハートの形など、親しみやすい鑑札のデザイン、そういった変更の試みも進められておりまして、今後とも市町、また、獣医師会等と連携をいたしましてこれらの取り組みを推進し、犬や猫の身元表示の重要性の啓発と、鑑札、迷子札、マイクロチップ等の装着促進に努めてまいりたいと考えております。

2点目は、犬猫の不妊去勢施策についての御質問でございます。

犬や猫の繁殖制限は、動物愛護法におきまして飼い主の努力義務とされておりますが、平成22年度に動物愛護センターに収容した犬猫のうち子犬、子猫が約60%を占めておりまして、飼い主による繁殖コントロールが十分に行われていないことが原因の一つであると考えております。

このため、県におきましては、センターで収容した犬猫の譲渡前講習会やしつけ方教室の開催、ポスターやリーフレットの作成配布等を通じて不妊去勢手術等による繁殖コントロールを呼びかけておりまして、市町による不妊去勢手術への助成制度や、民間募金を原資とした動物愛護団体による支援活動の広がりも見られるところでございます。

今後とも動物愛護センターでの飼い主に対する指導や啓発活動を積極的に進めますとともに、市町や民間団体における先進事例の紹介、普及等にも取り組みまして、市町を初め、県獣医師会や動物愛護団体等と連携をいたしまして、県内全域で不妊去勢手術や繁殖コントロールの普及促進に努めてまいりたいと考えております。

答弁:中村時広知事

次に、犬猫殺処分ゼロの問題についてでありますけども、動物愛護の基本は、人の命が大切なように動物の命もその尊厳を守ることにあり、動物の命に対して感謝及び畏敬の念を抱くとともに、その気持ちを動物の取り扱いに反映させることが不可欠であり、議員御提案の犬猫持ち込みゼロ作戦や犬猫殺処分ゼロの実現を目指していくことは、その理念にかなうものであると認識をしております。

しかし、その一方で、動物愛護法では、都道府県に対し、犬猫の引き取りが義務づけられておりまして、また、実際の引き取り業務は市町に移譲していることから、提言を具体化するためには、すべての県民に対し、動物愛護思想の一層の徹底と殺処分ゼロに向けた意識醸成を図るとともに、犬猫の引き取り窓口となる市町など関係機関・団体の十分な理解と協力をいただくことが何よりも重要であると思います。

このため、平成24年度が県の動物愛護管理推進計画の中間見直し年に当たりますことから、市町や獣医師会、動物取り扱い業者や愛護団体はもとより、教育や警察、公民館や一般県民等の代表で構成する協議会を設置しまして、議員のお話の熊本市における殺処分ゼロの取り組み状況や、場合によっては問題点等も分析し、見きわめた上で、本県における犬猫の持ち込みや殺処分の減少を目指す具体的な数値目標と必要な対策のあり方について、各方面からの意見提言をいただき、見直し後の推進計画において、今後の動物愛護行政の展開方針を示していきたいと思います。

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