議会質問

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2011年 2月定例会(3/2)

テーマ地域経済対策

財政の見える化について(2011年2月定例会)

財政の見える化について - 質問 -

次に、「財政の見える化」についてお伺いします。

先日、松山市内在住の青年から、こんな御質問をいただきました。「木村さん、国の借金がもうすぐ1,000兆円を超えそうだとニュースで言ってましたが、愛媛県の借金は今どれぐらいですか。」、私は「約1兆円になります。」とお答えした上で、この間の財政構造改革の取り組みによって、公債費、つまり毎年の借金返済額は2年前をピークに徐々に減少していく見込みですと将来見通しについて御説明したのですが、次の瞬間、即座にこう切りかえされたのであります。「それ、何年後になくなりますか。」、実に青年らしい鋭い質問であり、私は自身の不明に恥じ入る気持ちとともに、非常に重要な示唆を得た思いがいたしました。

こうした財政に対する疑問と不安は、彼に限らず多くの方々からお伺いするところでありますが、その要因は、1つには財政の見えにくさ、わかりにくさというところに起因するのではないでしょうか。県では、いわゆる財政の見える化を図るため、平成20年度決算より新地方公会計制度を導入し、総務省方式改訂モデルによる財務書類4表を作成、公表されておりますが、東京都では平成18年度から複式簿記・発生主義会計の考え方を加えた独自の新公会計システムを導入し、一定の成果を上げているそうであります。

メディアでは余り取り上げられていないようですので、調べましたところ、それまで赤字財政が続き、財政再建団体に転落寸前だった東京都財政でしたが、複式簿記・発生主義会計の導入によって、財政の見える化を実現し、1兆円以上の隠れ借金を返済、さらに積立金を1兆5,000億円以上、積み増しされているそうであります。そうした取り組みの果実は、福祉予算の比率と金額の向上という形で都民に還元され、大いに喜ばれているとのことでございました。

御案内のとおり官庁会計では、公営企業会計を除いて現金主義による単式簿記なのに対し、一般的に民間企業などで用いられているバランスシートは、発生主義による複式簿記という点で、両者は決定的に異なります。

簡単に申しますと、単式簿記は現金の流れだけを把握するのに対し、複式簿記はお金の流れに伴って、例えば物を買った場合、それが資産になるのか費用になるのか、勘定科目であらわされるため財政がよく見える。そのため不正やごまかしがききにくく、何よりどの事業がどれくらい借金を生み、どれくらい利益を生んでいるのかという形式知をもととした建設的な議論ができるということであります。

このため、多くの地方公共団体でもバランスシートを作成するなどの取り組みを進めてきましたが、こうした財政再建事例を踏まえ、大阪府では平成24年度から東京都に準じた方式を導入することとなったほか、幾つかの自治体で公会計制度改革による財政の見える化がさらに推進されようとしています。

こうした動きは、まさに先ほどの「それ、何年後になくなりますか。」との青年の問いかけに対する答えであり、多くの県民の皆様の御要望に通じていくと私は思うのであります。

そこで、お伺いいたします。

本県では、平成20年度決算から総務省方式改訂モデルによる新地方公会計制度が導入されましたが、これにより財政の見える化がどのように進んだのか、お聞かせください。

また、本県におきましても、東京都が導入している発生主義、複式簿記の手法を取り入れた新しい公会計システムに切りかえるべきと考えますが、御所見をお示しください。

財政の見える化について - 答弁 -

答弁:総務部長

木村議員にお答えをいたします。

総務省方式改訂モデルの導入により、財政の見える化がどのように進んだのか、また東京都が導入している公会計システムに切りかえるべきではないかとのお尋ねでございます。

本県は、企業会計的な手法を活用した公会計整備の取り組みといたしまして、総務省の示す2つの財務書類のモデルのうち、売却可能資産から段階的に資産評価を行いまして、そのほかは既存の決算統計データを有効活用して作成する総務省方式改訂モデルに基づく財務書類4表を、平成20年度決算分から作成し、ホームページで公表しているところであります。

財務書類の作成、公表によりまして、社会資本等の資産とその調達財源となった負債の状況や、減価償却費等の現金支出を伴わないコストなど、現金主義では把握できない情報や外郭団体を含めた一覧性ある財務情報が、よりわかりやすい形で開示されるとともに、遊休県有地売却の前提となります売却可能資産の洗い出しを中心に、効率的な財政運営に資する情報の整備が進むなど、財政の見える化は一定程度進んでいると考えております。

木村議員御提案の東京都方式でございますが、複式簿記に対応した財務会計システムの導入を行いまして、数多くの特別会計を含めて、日々の会計処理の段階から自動的に発生主義による複式記帳を行いまして財務諸表を作成するシステムでございますが、この財務会計システムの再構築、あるいはその運用に極めて多額の経費を要しますことを考慮いたしますと、本県に導入した場合の費用対効果を慎重に検討する必要がありますことから、東京都の運用状況や他県への普及状況を注視しながら、現行方式による財務書類の改善や活用に努めていくことが重要と考えております。

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