次に、宿泊税の導入についてお伺いします。
昨年12月、県議会観光・文化振興議連の一員として宮城県仙台市を訪れ、宿泊税の導入に向けた取り組みについてお話を伺いました。
それによりますと、人手不足の解消や多様化する観光ニーズへの対応、欧米豪等の新規市場の開拓といった将来的な課題を先取りし、手遅れになる前に対応するためには一定規模の財源が必要だ、との着想から、
2018年に宿泊税導入の検討が始まり、関係事業者・団体、自治体、地域等と協議を重ね、昨年10月、宿泊税条例が可決成立、2025年度からの導入に向け準備を進めていくとのことでありました。なお、現時点においては、2026年1月13日から徴収を開始することとなっています。
条例によりますと、観光客1人1泊あたり200円からなる想定税収規模は年間約10億円で、魅力ある観光資源の創出、観光産業の活性化、観光客受入環境整備の充実、国内外との交流拡大の促進に充てるとしています。
視察した仙台市をはじめ、全国42の自治体が導入済、もしくは導入を予定しており、92の自治体が新たに検討中というふうに、宿泊税を導入する動きが今、全国的に広がっています。
ご案内の通り、宿泊税は、地方自治体が条例で制定することができる法定外目的税で、ホテル等の宿泊事業者が利用者から徴収しますが、利用者の多くは地元以外の方々であるため、自治体住民や議会の理解が比較的得られやすいといった点も、導入が広がる理由の1つと言われています。
導入に向けては条例を制定し、総務大臣の同意が必要となります。税額は1泊100~500円が主流で、高級施設の中には数千円~1万円という例も見られるそうです。
徴収した宿泊税の使途は観光関連に限られますが、オーバーツーリズム対策や受入れ環境の整備、さらなる観光振興など、自治体により使途は様々です。
8/24付愛媛新聞の記事によりますと、本県では、県や今治市、久万高原町が宿泊税の導入について「関心があり、今後検討予定」で、松山市など11市町が「検討予定はないが、関心あり」、宇和島市など一部自治体が「関心なし」とのことですが、私は観光客の動向データなどのエビデンスを踏まえ、県がリードする形で、主要観光地を有する自治体から段階的に導入開始を検討してはどうか、そして導入後の効果検証を踏まえ、県全体へ横展開するのが現実的ではないかと考えます。
例えば、2023年の県内宿泊者数は約469万人泊ですが、仙台市のように、仮に1人当たり200円の宿泊税を頂いたとすると、愛媛県として約9億円の財源が見込まれます。
同様のシミュレーションで、例えば松山市では2023年の約237万人泊で約4.7億円、今治市では2023年の約46万人泊で約9200万円の財源が見込まれます。
新たに得た財源を活用し、道後温泉や松山城を有する松山市では、多言語対応の充実や通信環境の整備、歴史的景観保全、二次交通の増強、MICEの誘致など、
しまなみ海道を有する今治市では自転車専用道やサイクリングインフラ、トイレの整備、ルールやマナー啓発など、宿泊税を納める観光客も、徴収する自治体も、双方が納得しウィンウィンとなる関係の構築は十分可能と考えます。
先日、テレビで、訪日外国人旅行客、いわゆるインバウンドが、帰国時に放置するスーツケースが大都市で広がり深刻な社会問題になっているとの報道がありましたが、コロナ後ますます増え続けるインバウンドの混雑に伴うオーバーツーリズムへの対策は、そこまでには至っていない今から、本県としても対策を検討すべきではないでしょうか。
また、宿泊税の導入に関しては、自治体や観光・宿泊・交通など、様々な事業者に影響や利害が生じるため、できるだけ幅広く丁寧な議論を進めてほしいと思います。
そこで、お伺いします。
宿泊税の導入について、県はどのように考えるのか。また、今後どのように検討を進めていくのか、お示しください。
〈答弁概要:観光スポーツ文化部長〉
宿泊税につきましては、近年、全国的に導入や検討が進んでおり、本県におきましても、観光関連施設の多言語対応や、オーバーツーリズムの未然防止を始めとした受入環境整備など、観光振興における有効な財源確保策の一つであると認識しておりますことから、先月、県・市町連携推進本部会議の開催に合わせまして有識者を講師に招いた勉強会を行い、宿泊税を含む様々な財源確保策の必要性や特徴、他の自治体における事例について、情報共有を図ったところでございます。
現時点では、先行導入している自治体の制度や導入に向けた手続き等を研究しているところであり、具体的な検討に着手している段階ではありませんが、先行事例においては、検討から導入まで3年以上要していることも踏まえ、宿泊事業者や関連団体等の理解や協力、さらには導入を検討する市町との調整が必要不可欠であると認識をしております。 このため、県内観光の振興に向けた宿泊税を含む新たな財源確保の必要性や、制度設計において重要な柱となる具体的な使途等について、宿泊事業者や市町担当者等を対象に、広く勉強会を開催するなど、関係者の理解を深めつつ、丁寧に議論を重ねたうえで、本県での導入の是非について検討していきたいと考えております。
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