次に、クマの出没と人身被害についてお伺いします。
クマの市街地への出没が全国的に増加し、各地で人身被害が相次いでいます。
環境省によりますと、今年4月から7月までのクマによる人身被害者数は、長野県が13人、岩手県が12人、秋田県、福島県、新潟県でそれぞれ4人などの合わせて55人。
このうち、北海道と岩手県、長野県でそれぞれ1人、合計3人が死亡しました。犠牲となられた方に心からお悔やみを申し上げますとともにご冥福をお祈り申し上げます。
過去との比較では、年間219人と最多を記録した2023年度と、現時点で同水準になっています。
そうした中、一定の条件を満たせば自治体の判断で市街地での「緊急銃猟」を可能とする改正鳥獣保護管理法が今月1日に施行されました。
これまで市街地での猟銃使用は、人が襲われる危険性が生じ、警察官が同行した上でハンターに発砲を命じた場合のみ可能で、それ以外は原則禁止でした。
今回の改正法では、ヒグマやツキノワグマ、イノシシの3種を、危害を及ぼす恐れが大きい「危険鳥獣」と規定。これらの危険鳥獣を緊急銃猟する際は、市町村長の判断でハンターに捕獲を委託することができ、迅速な対応につなげるとしており、例年、秋にクマの出没が増えることを念頭に、体制整備を急ぐ狙いがあります。
警察から市町村長に意思決定が委ねられた形となりますが、市町村長の判断で緊急銃猟を許可できる際の要件として、
1つ目に、クマ等が住居や広場といった人の日常生活圏に侵入している、または侵入する恐れが大きいこと、2つ目に、人の生命または身体への危害を防止するために緊急の措置が必要なこと、3つ目に、銃猟以外の方法では的確かつ迅速な捕獲が困難なこと、4つ目に、避難等によって地域住民等に弾丸が到達する恐れがないこと、そのすべてを満たす場合に初めて実施が可能となります。
また、市町村長は地域住民の安全確保のために、必要に応じて、通行制限や避難指示を行うことができ、発砲により弾丸が建物に当たるなど、物損事故が発生した場合は自治体が補償することとしています。
しかし、クマなど有害鳥獣の迅速な駆除を担うのは実質的に地元猟友会の方々です。
すでに一部の猟友会からは、万一事故が起きた場合の責任の所在や猟銃所持許可の取り消しなど、ハンターが責任を負うリスクが拭いきれないとして、発砲に疑念がある場合はハンター自身が中止を判断することができるとの見解が表明されています。
クマの人の日常生活圏への出没が増加する一方で、猟友会員の減少とハンターの高齢化が深刻です。
とりわけハンターの育成は急務であり、現役ハンターの不安解消と、出没に備えた訓練など自治体への支援を急ぐ必要があります。
そうした状況を受け、環境省は7月に緊急銃猟の手順を示したガイドラインを公表。
各自治体に対し、対応マニュアルの作成や関係者による訓練の実施など日頃の準備を進めるように求め、ハンターの不安解消と駆除の実効性の向上に努めることとしています。
四国においても近年、徳島県や高知県の一部でツキノワグマの目撃情報が相次ぐ中、本年6月、四国森林管理局等から、「剣山とその周辺で少なくとも26頭が生息し、親子が4組確認された」との調査結果が発表されました。
そして、四国では絶滅危惧の可能性が高いとされるツキノワグマですが、今回の調査結果から、四国森林管理局等は「絶滅の危険性が高い個体群では繁殖が安定して行われているかが重要な情報となる。今回、複数の親子が確認され、個体数が少ない中でも繁殖が確認できた。」とコメントしています。
そこで、お伺いします。
全国的にクマの出没が拡大する中、本県における生息状況や出没の可能性など現状及び見通しについて見解をお示しください。
また、危険鳥獣を駆除する主体となる猟友会とハンターについて本県の現状はどうか、さらに、今月からの改正鳥獣保護管理法の施行に際し、自治体や警察を含め、どのような体制の整備に取り組んでいるのか、ご所見をお示しください。
〈答弁概要:県民環境部長〉
全国的に市街地へのクマの出没が増加し、人身被害等が社会問題となる中、四国においても徳島県や高知県でツキノワグマの目撃情報が寄せられておりますが、県内では、昭和47年、伊予市でツキノワグマのオス1頭が捕獲されたのを最後に確実な生息記録はなく、以後、ツキノワグマの生息を裏付ける有力な情報は寄せられておりません。
ツキノワグマは、広葉樹や草の新芽、昆虫、クリなどの木の実を多く食べるとされておりますが、県内においては、こうした大型哺乳類が十分生息できるだけの環境に乏しく、県レッドデータブック2014においても、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いとされるカテゴリー絶滅危惧ⅠB類に分類しているところでございます。
四国では剣山山系を中心とした地域に少数のツキノワグマが生息するのみとなっており、県内で出没する可能性は低いと考えられますが、万一遭遇した場合に備え、対応方法について県ホームページで周知しており、引き続き、国等のモニタリング結果や隣県の出没情報を注視し、県内で目撃報告等が寄せられた場合には速やかに確認を行うなど、市町や関係機関等と連携しながら、適宜適切な注意喚起等により、県民の安全・安心の確保に努めてまいりたいと考えております。
〈答弁概要:県民環境部長〉
危険鳥獣駆除に不可欠な役割を果たしていただいている猟友会につきましては、県が鳥獣害対策の窓口を一本化した平成23年度と昨年度末を比較すると、会員の数は約3,200人から3,100人に、ハンターは約2,300人から1,400人に、それぞれ減少し、また、そのいずれも60代以上が約7割であるなど、狩猟免許の取得促進と若手人材の確保が課題となっておりまして、県では狩猟フェスティバルや高校生対象の出前講座、狩猟者フォローアップ研修等に取り組んでいるところでございます。
こうした中、今月から改正鳥獣保護管理法が施行され、新たに危険鳥獣の指定や緊急銃猟を可能とする制度が設けられるとともに、人身被害が懸念される際には、迅速かつ柔軟な対応が求められ、今後は、これまで以上に、市町による猟友会への捕獲要請、警察による安全確保、専門的知見・経験を持つハンターの確保等、複数の主体が緊密に連携する体制の整備が、重要になると認識しております。 緊急銃猟につきましては、県内で実施が必要となるケースはごく稀であると現時点では考えられますが、改正法の趣旨を踏まえ、危険鳥獣が出没した際の迅速な判断と対応に向けて、市町や警察との情報共有状況等を改めて点検するほか、市町が緊急銃猟の具体的対策を進める際には、県が速やかにサポートを行うなど、県民の安全・安心を最優先に、実効性のある危険鳥獣対策の体制整備に努めてまいりたいと考えております。
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