次に、中小企業の賃上げについてお伺いいたします。
わが国の全企業数の99.7%を占め、約3300万人が働く中小企業において、持続的な賃上げができるかどうかは、経済の好循環を実現する上で非常に重要なカギとなります。
しかし、物価高が続く中において、それを上回る賃上げは一部の大企業を除き、多くの中小企業ではほとんど実現できていないというのが現実です。
大企業における高い賃上げの動きを中小企業に広げていくためには、労務費やエネルギー価格などの上昇を取引価格に上乗せした適切な価格転嫁が不可欠です。
しかし、公正取引委員会の昨年の調査では、全体として前回より労務費などの価格転嫁率は上がっているものの、道路貨物運送業やビルメンテナンス業・警備業といった取引価格が上がっていない業種の回答を見ると、同じ業種のサプライチェーンの中で多重委託構造が存在し、最終の委託先まで価格転嫁が円滑に進んでいないことが明らかとなりました。
中小企業庁では、いわゆる下請Gメンによる調査を実施して不当に価格を据え置くなどした事業者を公表するなどして改善を促していますが、地元の中小事業者からは“最終の委託先までは調査は及んでおらず、泣き寝入り状態が続いている”といった声も聞かれます。
そこで、お伺いいたします。
県内中小企業における価格転嫁の進捗状況はどうか。また、適切な価格転嫁がより一層円滑に進むよう、今後どのように取り組んでくのか、ご所見をお聞かせください。
加えて、中小企業の持続的な賃上げを実現する上で、価格転嫁とともに不可欠となるのは、その原資です。原資を確保するためには生産性の向上が何より必要で、そのためのあらゆる支援を講じていく必要があります。
県はこれまで、各種融資や業務改善等に対する様々な支援を行ってまいりましたが、それでもなお中小企業が直面する現状は厳しく、物価高を上回る賃上げへの道のりは険しく不透明な状況といえます。
そこで、お伺いします。
県は、中小企業の持続的な賃上げの実現に向け、その原資確保に不可欠な生産性向上の支援にどのように取り組んでいくのか、見解をお示しください。
〈経済労働部長〉
県内企業を対象に、県が今年1月に実施した調査では、物価高騰への対策として販売価格を引き上げた企業は6割を上回っている一方で、価格転嫁率が50%未満に止まる企業が5割を超えておりまして、一定の広がりは見られるものの十分な価格転嫁には未だ至っていないと認識しております。
これまで県では、総合経営支援拠点「CONNECTえひめ」における価格交渉セミナーの開催や、国がえひめ産業振興財団に設置する「下請かけこみ寺」による支援に加え、パートナーシップ構築宣言企業への県補助金審査での加点評価、さらには、埼玉県が開発した「価格交渉支援ツール」を活用した、本県独自の主要産業別テンプレートの県ホームページでの提供と利用促進など、様々な手段を講じて中小企業の価格転嫁を後押ししているところでございます。
また、国におきましても、下請法の適用範囲の拡大や協議に応じない価格決定の禁止など、法改正も視野に対策の強化を検討しているところでありまして、その動向も注視しつつ、引き続き、国や関係機関と連携して、各支援施策の効果的な活用の促進に努め、県内中小企業の価格交渉力の向上により、適切な価格転嫁が着実に進むよう、粘り強く取り組んでまいりたいと考えております。
〈中村知事〉
物価や資源価格の高騰が長期化する中、中小企業の持続的な賃上げを実現するためには、業務効率化による生産性の引上げや付加価値の向上による収益力の強化が不可欠でありますことから、県では、デジタル技術を駆使したDX優良事例の現場実装や省エネ・省コスト設備の整備補助等をはじめとする様々な支援策を展開しているところでございます。
加えて、12月補正予算で措置した中小企業の生産性向上に資する設備投資への支援事業では、賃上げを行う企業の補助率かさ上げ制度を創設したほか、今回の2月補正予算案においても、国の業務改善助成金への上乗せ補助に必要な経費等を計上するなど拡充を図っているところでございます。
更に来年度は、ロボット導入による検品工程の自動化など、業務効率化に繋がる産業DXの優良事例の横展開や、産業技術研究所を核とした金属加工業におけるスマート工場の実証など、産学金官連携による5GやAIを活用した共同研究開発を進めて、企業の後押しを加速させていきたいと思っています。
また、先月開催の地方版政労使会議には私も出席させていただき、国や労使団体の方々と賃上げ等に関して意見交換し、改めてこれらの施策に取組む思いを強くしたところでございます。今後も中小企業に寄り添ったきめ細かなサポートを行うことで、賃上げ原資の確保に繋がる収益力強化や生産性向上を全力で支援してまいりたいと思います。