皆様、おはようございます。公明党の木村誉でございます。
1年の掉尾を飾る12月定例会に、質問の機会を賜り誠に有難うございます。
ご案内の通り、本年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックとともに、戦後最大の経済の落ち込みという未曽有の国難に直面する1年となりました。
この度の感染症によりお亡くなりになられた全ての皆様に、謹んで哀悼の誠を捧げますとともに、感染された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
そして、私たちの命を守るべく、ウイルスとの闘いの最前線で献身的にご尽力を賜りました、医療従事者をはじめとする関係者の皆様、知事はじめ職員の皆様、ご協力を頂いた多くの県民の皆様に、心から感謝を申し上げます。
来年こそは、この未曽有のコロナ禍を、全国民の団結で必ず乗り越え、人類がウイルスに打ち勝った証としての「東京オリンピック・パラリンピック」が晴れやかに開催されますと共に、世界が再び希望を取り戻し、力強く、新たな一歩を踏み出す年となることを祈念しつつ、質問に入らせて頂きます。
初めに、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進についてお伺いします。
大著「歴史の研究」で有名な20世紀の歴史家アーノルド・J・トインビー博士は、「自然環境や社会環境から厳しい“挑戦”を受けた人々が“応戦”に成功した時、新しい文明が生まれる」と論じました。
博士が打ち立てた文明論の核心に照らせば、現在、世界で猛威を振るう新型コロナウイルスに対し、それを乗り越えようと人々が“応戦”に立ち上がるとき、私たちの社会は壮大な進化を遂げるに違いありません。
「ペストは近代の陣痛」という言葉がありますが、14世紀に世界で1億人を超える死者を出したペストは、欧州において封建社会を崩壊させ、ルネサンスを
生み、やがて資本主義社会の誕生へと繋がっていきました。
19世紀のコレラは汚れた飲み水から流行したため、世界に公衆衛生の重要性を知らしめ、その後「コレラは衛生の母」と呼ばれるようになり、パンデミック後の世界では一気に上下水道の整備が進むこととなりました。
今から100年ほど前、20世紀最大のパンデミックと言われたスペイン風邪は、その猛威により第一次世界大戦の終結を早める要因となったものの、その後、世界恐慌、第二次世界大戦へと繋がっていきました。
いずれの歴史も、パンデミック後には大きな社会変革が起きるという事実を示しているのであります。
では、今、私たちが直面するコロナ禍を乗り越えた時、そこに広がる新たな社会は一体どのような姿をした社会でしょうか。
そして、新型コロナという未知なるウイルスの“挑戦”に対して、アフターコロナを念頭に、私たちにはどのような“応戦”が求められるのでしょうか。
私は、その一つが「デジタル・トランスフォーメーションの推進」と考えます。
県では先頃、県政全般にわたってデジタル技術の導入を図り、市町との協働や官民共創を前面に打ち出した「愛媛県デジタル総合戦略(仮称)」の骨子案を、全国に先駆けて発表。来年1月上旬に戦略最終案作成、2月下旬に戦略決定との見通しを明らかにされましたが、その骨子案に基づきながらいくつかお伺いしたいと思います。
戦略は「デジタルでつなぎ切り拓く、活力と安心感あふれる愛顔のえひめ」を基本理念とし、来年度から3年間の具体的な取り組みを“3つのビジョン”に分けて示しています。
“行政のDX”では、県庁に訪れることなく、全ての行政サービスがオンラインで完結する“手のひら県庁”への挑戦をはじめ、業務の可視化とBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の推進やスマートオフィスの整備により、職員の働き方のニューノーマルをめざす他、聖域なきDX等に取り組むとしています。
“暮らしのDX”では、防災減災への5GやAI等、デジタル技術の積極的活用による「安全・安心」デジタルえひめの実現や、デジタル教育先進県えひめへの挑戦の他、婚活や子育て、医療、介護などライフステージに応じたDX等を推進するとしています。
“産業のDX”では、デジタル技術とデータを活用したスマート農林水産業の愛媛発モデルの展開、スマートものづくりによる技術革新の他、観光や県産品販売の分野では、一歩先行くデジタルプロモーションの実践等でDXに取り組むとしています。
いずれも夢のある素晴らしい取り組みだと思いますが、一方で、高齢者をはじめ県民の多くにとってDXはとてもわかりにくい概念でもあり、ぜひそうした方々に、できるだけイメージしやすく、理解と共感を広げながら取り組んでいって頂きたいと思います。
その意味では、“手のひら県庁”というチャレンジ目標は非常にイメージしやすく、実現できればこれほど利便性が実感できるものはありません。
そこで、“手のひら県庁”、すなわち、行政サービスのデジタル化に絞り、何点かお伺いいたします。
菅総理が所信表明演説で述べられましたが、今回の新型コロナウイルス感染症でわが国の行政サービスのデジタル化の遅れが浮き彫りとなりました。
業務の遂行にスピード感が不足し、必要な人にタイムリーに手を差し伸べることができない実態が、特別定額給付金や各種支援金の支給をはじめ、様々な場面で明らかとなり、特に医療現場では、対面や紙ベースでの膨大な事務処理を余儀なくされ、崩壊寸前という危機的な状況が、あちこちで生まれました。
そうした経緯を踏まえ、国では明年、デジタル庁を立ち上げ、アフターコロナを見据えたDXを全国的に加速させようとする中、本県においても「愛媛県デジタル総合戦略(仮称)」に基づき、積極果敢に取り組んで頂きたいと思います。
そこで、お伺いします。
デジタル化の推進にあたっては、情報格差を解消することが重要であり、高齢者や障がい者、外国人や生活困窮者などあらゆる人が使いやすく、恩恵を受けられるようなデジタル化を官民一体でめざすべきと考えますが、すべての県民が恩恵を受けるデジタル化の推進にどのように取り組んでいくのか、ご所見をお聞かせください。
さらに、行政のデジタル化推進において重要なカギとなるのが、マイナンバーカードであります。
これについて菅総理は、来年3月からの健康保険証としての利用を始め、運転免許証との一体化の検討などを進めるとともに、今後2年半の内に、ほぼ全国民に行き渡ることをめざすと述べております。
そのためには、多くの県民が抱いている個人情報のセキュリティに対する不安など、普及の障壁となる課題を1つ1つクリアしていかなければなりません。
そこで、お伺いします。
行政のデジタル化推進の基盤となるマイナンバーカードについて、菅総理が示した2022年度末までに全国的な普及をめざすという方向性について、県はどう受け止め、今後どのように取り組むのか。各市町における現在のマイナンバーカードの普及状況や課題等も併せて見解をお示しください。
<答弁:中村知事>
木村議員に、私の方からは、デジタルトランスフォーメーションの推進についてお答えをさせていただきます。
デジタル技術は、業務の効率化やコスト削減だけでなく、様々な困難を抱える方々が、住み慣れた場所で生き生きと暮らしていく上でも非常に重要な有用なツールであり、愛のくに 愛顔あふれる愛媛県の実現を県政の基本理念に掲げる本県としても、積極的な活用を図る必要があると認識をしています。
このため、県では、高齢者向けスマホ教室の開催や端末機の取得促進、障がい者向けパソコンボランティアの養成や派遣等を通じて、デジタル機器の活用能力の向上を支援しているほか、県庁舎への来訪が困難な方も24時間利用可能なAIを活用した総合案内サービスの提供や、民間事業者が南予や中予で実施する交通弱者等の利便性向上に向けたMaaSの実証実験への参画・協力にも取り組んでいるところでございます。
また、本年度末に策定するデジタル総合戦略では、誰一人取り残さない県民本位のスマート愛媛の実現を将来ビジョンとして位置づけ、市町とも連携しながら、電子申請による手続のオンライン化など、住民の利便性向上に取り組むほか、新たに構築するデジタルプラットフォームを活用し、優れたデジタル技術を持つ民間事業者と様々な困難を抱える方々をつないで課題解決を図りたいと考えており、今後とも、県民誰もがデジタル化のメリットを実感できる効果的な施策を積極的に展開してまいりたいと思います。
<答弁:総務部長>
マイナンバーカードの普及に関する御質問にお答えいたします。
マイナンバーカードは、公的個人認証機能によりオンラインで本人確認が確実にできるなど、デジタル社会を推進するための基盤であり、コロナ禍で浮き彫りとなった様々な課題を乗り越えていく上でも、その普及拡大を速やかに進めていくことが極めて重要であると認識いたしております。
一方、普及に向けては、個人情報の流出への懸念や限定的な用途が課題であると考えており、県では、マイナンバーカードの利便性、安全性等に関する広報活動のほか、市町が実施する夜間、土日申請受付窓口や商業施設、学校での出張申請受付等に協力するなど、取得機会の拡大に努めておりますが、本年11月現在の県内のカード交付率は、市町別では、最低が12.8%、最高が27.2%と大きく幅があり、県全体でも19.5%にとどまっているところでございます。
先日、国が未申請者に対しQRコードつき申請書の送付を始めましたことから、この機会を捉え、市町と連携しながら出張申請受付などの申請サポート策を強化いたしますほか、健康保険証、運転免許証等の各種証明書としての利用やマイナポイントの付与といったメリットを県民の方々に分かりやすく丁寧に広報し、カードの取得促進に取り組んでまいりたいと考えています。