統一的な基準による財務書類の作成について - 質問 -
次に、地方公会計の整備についてお伺いします。
私は平成23年2月定例会において「財政の見える化」について取り上げ、東京都の事例と成果を示しながら“発生主義と複式簿記を取り入れた新しい公会計システムを導入すべき”と提言しました。残念ながら、その際の答弁は、多額の経費を要することから導入には慎重な検討が必要、というものでありました。
あれから5年、地方公会計を取り巻く環境が大きく変わろうとする今、あらためてこの問題を取り上げてみたいと思います。
地方自治体の公会計基準の統一という課題に対し、総務省では「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」における26度にわたる議論を経て、平成26年4月、固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を前提とした財務書類の作成に関する統一的な基準を策定。
昨年1月には、原則として平成27年度から平成29年度までの3年間で統一的な基準による財務書類を作成するよう、全ての自治体に対して要請が行われました。そのポイントは大きく3つ、①発生主義と複式簿記の導入、②固定資産台帳の整備、③統一的な財務書類による比較可能性の確保であります。
中でも私は、とりわけ③の統一的な財務書類による比較可能性の確保が肝心であり、これにより、資産や負債などのコスト情報やストック情報が「見える化」され、住民に対する説明責任の履行や、行政内部のマネジメント機能の飛躍的な向上が図られるものと認識しています。
例えば公共施設ですが、人口減少や少子化という流れの中で、私たちは、学校など公共施設の統廃合という課題に直面しております。このことは地域にとって、苦渋の選択・判断を迫られる非常に切実な問題であります。
また、施設の老朽化の進展による維持改修費の急増が見込まれる中、今後は、公共施設のあり方を根本的に見直す必要に迫られますが、その際、議論をより深め、合意形成を、より合理的に導き出すために期待されるのが、今回の統一的基準による財務書類の整備なのであります。
公共施設の統廃合については、施設別行政コスト計算書を作成することにより、例えば、公民館や公園、図書館等の利用者1人当たりコストというものが明らかになります。その1人当たりコストを、県内、又は市内全体で比較し、“ある施設だけ2倍近く突出して高い”となった場合、セグメント分析によりその要因を特定した上で「施設管理を民間委託してはどうか」、「使用料を上げてはどうか」、「いや廃止して近接の施設と統合してはどうか」等といった議論の深堀りが可能となるのです。
予算編成においても、例えば「3つの県有施設を別々に維持補修するとこれくらいかかるが、統合して新たに建設するとコストをこれだけ抑えられる」といった、より合理的な意思決定が可能となります。
又、施設の老朽化対策についても、貸借対照表や固定資産台帳を活用することにより、施設類型別の老朽化比率が導き出されるため、対策の優先度が明確になり、将来の更新時期の平準化や総量の抑制も可能となります。
それ以外にも、隠れ借金と言われる赤字を生み続ける資産なども今まで以上に明確になるため、財政の無駄にメスが入り、その分、より必要性の高い分野へ財源を充てることができます。県におかれては、今こそ「財政の見える化」に向けて、ギアを一段上げて取り組んでほしい、と思うのであります。
そこで、お伺いします。
国から全ての地方公共団体に対し、平成30年3月までに統一的な基準による財務書類の作成が要請されている中、本県として、県有施設にかかる固定資産台帳の整備をはじめ、今後どのように取り組んでいかれるのか。県内市町の取り組み状況についても併せて、ご所見をお示しください。
統一的な基準による財務書類の作成について - 答弁 -
答弁:総務部長
県では、財政状況を県民に分かりやすく開示するために、平成20年度決算分から総務省方式改訂モデルに基づきます財務書類を公表して参りました。昨年1月、国から、財政のマネジメントを強化し、限られた財源を賢く使う取組みを進めるため、統一的な基準による地方公会計を30年3月までに整備するよう要請があったところでございます。
この地方公会計は、他団体との比較を容易にするとともに、固定資産台帳の整備によりまして公共施設の更新・統廃合の検討ですとか、適正な受益者負担の検討が可能となりますことから、県では、28年度中にシステムを整備し、29年度中に統一的な基準による財務書類を公表したいと考えております。
また、県内市町の公会計整備を支援するため、19年度から市町職員を対象に「県公会計改革研究会」を開催し、公認会計士等によります講習会とか、団体ごとの個別相談会など、きめ細かな支援に努めてきました結果、固定資産台帳は、27年度には4団体、28年度には残り全ての市町で整備される予定でございます。統一的な基準に基づく財務書類は29年度までには全ての市町で整備される見込みとなっています
今後とも、県と市町が連携して地方公会計の整備促進に取り組むことにより、県民に対する説明責任を果たすとともに、財務書類を活用した財政運営の効率化・適正化をより一層推進して参りたいと考えております。