障害者の就労支援について - 質問 -
最後に、障害者の就労支援についてお伺いします。
第180回通常国会が、今月8日、閉幕しました。79日間の会期延長を行ったにもかかわらず、政府提出法案の成立率は66.3%と、過去20年で最低だった2010年の54.7%に次ぐ低い水準となったことは皆様御案内のとおりであります。いずれも民主党政権の記録でありますが、党内さえ満足にまとめられないのだから、この法案成立率の低さにもうなずかざるを得ない、そんなじくじたる思いでいっぱいです。
さて、その少ない可決法案の中で、我が党も推進し全会一致で成立したのが、国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律、いわゆる障害者優先調達推進法であります。同法は、障害者の就労機会を増加させ、自立を促進することを目的とし、国等に対して、障害者がつくった製品の購入や清掃などの業務委託を優先的に行うことを努力義務とするものです。
が、そもそもこれは、公明・自民両党で2008年に提出したいわゆるハート購入法案が原型で、政権交代で廃案にされたものをほぼ踏襲するものです。だったら、初めから廃案にするなと申し上げたいのであります。
同法成立の背景には、国や地方自治体などが商品の購入や業務委託をする際には競争入札が原則であるため、競争力の弱い障害者就労施設は契約が難しいという実情や、長引く景気の低迷で民間企業から障害者施設への発注は低調かつ不安定であるため、国や地方自治体などからの安定した仕事を求める声が高まっていることなどが挙げられます。
こうした背景を踏まえ、このたび、国や地方公共団体などにおいては、障害者施設からの商品購入を優先的に行うとともに、毎年度の調達目標を定め、その結果を公表すること、また、入札の参加条件として障害者の法定雇用率や障害者施設との取引状況を考慮することなど、障害者施設の受注機会増大等を図るための措置を講ずるよう努めることが同法に盛り込まれたのであります。
早速、私のもとにも地元関係者から大きな期待の声が寄せられております。
本県におかれましては、県障害者授産工賃倍増計画を策定し、鋭意取り組まれる中、平成23年度の月額平均授産工賃額は平成18年度に比べて21.5%増の1万4,231円に向上させるなど、成果を上げていると伺っています。関係者の御努力に敬意を表しますとともに、同法成立が追い風となり、障害者の就労環境がさらに向上することを心より期待したいと思います。
一方、四国4県の平均工賃について調べたところ、直近の平成22年度時点で、トップは徳島県の1万7,426円、3位の本県に比べて4,514円多く、率でいうと約3割増しという状況でした。
ちなみに徳島県では、飯泉知事が全国トップの工賃実現を本会議などでも明確に答弁されており、実際、平成20、21年度は全国第3位、平成22年度は第2位と、目標達成に向け着実に前進しているようであります。
本県といたしまして、ここは奮起するべきで、従来とは異なる発想も積極的に試みるべきであります。
例えば、種類や程度にもよりますが、障害者と農業の親和性は極めて高いと言われています。一方、農林水産省の2010年農林業センサスによると、本県の耕作放棄地の面積は全国第16位、また、全耕地面積に占める耕作放棄地の割合は21.95%と全国第5位で、四国では断トツのトップ。この問題は、深刻な鳥獣被害とも直結し、担い手問題とともに、本県にとって重要な農政課題の一つでもあります。こうした本県の特性から、福祉と農業をリンクさせると、農政課題の解決にも資する新たな雇用促進アイデアが見出せるかもしれません。
例えば、県下の耕作放棄地において、十分かつ一定規模の農地取得と整備を県が主体となって行い、それを区画ごとに障害者施設に対して委託し、施設は農作物の生産を行う。そして、販路開拓についても積極的に県が環境を整えていく。こうした仕組みはつくれないでしょうか。私は十分可能だと思います。
現状では、こうした一連全てに個々の施設関係者がその意欲と能力において挑戦しているのでありますが、その苦労は並大抵ではありません。健常者にとっても就農へのハードルは高いわけですから、ハンデを持つ障害者の方々にとってはなおさらです。
しかし、一方で、そうした苦労を乗り越え、障害者就労のビジネスモデルを築きつつある就労継続支援事業者もあります。松山市のパーソナルアシスタント青空のメイド・イン・青空事業は、その格好のモデルケースです。
パーソナルアシスタント青空の佐伯代表によりますと、何もかも手探り状態の中からトライした農業参入であったが、結果的に自然農法に行き着き、理解と支援の輪の広がりとともに販路開拓も進み、現在、1人当たりの平均月額収入は6万円を超えるほどになっているとのことであります。
障害者の就労に希望を与える事例として、また、自立促進の可能性を開く取り組みとして、関係者の励みになればと思い、御紹介をさせていただきました。
そこで、お伺いいたします。
まず、今回、国で成立した障害者優先調達推進法について、県はどのように評価するのか、御所見をお示しください。
あわせて、障害者優先調達推進法の成立を受け、本県にとって障害者の就労支援促進の追い風となるよう、この際、平成24年度から3カ年の目標を定めた県障害者工賃向上計画について上方修正すべきと考えますが、御所見をお示しください。
また、先ほどのパーソナルアシスタント青空の取り組みに見られますように、福祉と農業をリンクさせた新たな雇用創出モデルには大きな可能性が秘められており、こうした法人等の農業参入を積極的に進めていただきたいと考えますが、御所見をお示しください。
以上で私の質問を終わります。 御清聴いただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)
障害者の就労支援について - 答弁 -
答弁:保健福祉部長
障害者の就労支援についてのうち、障害者優先調達推進法の評価と障害者工賃向上計画の上方修正についての御質問でございます。
本県では、これまで随意契約の特例制度を活用して就労継続支援事業所等から優先的に物品の購入等を行うなど、工賃倍増計画の取り組みを進めてきたところでありまして、さらに、本年8月に策定した新たな愛媛県障害者工賃向上計画では、地域で障害者を支える体制の構築を重視し、市町からのさらなる発注促進を盛り込むなど、引き続き工賃の向上に取り組むこととしております。
今回成立したいわゆる障害者優先調達推進法につきましては、制度の詳細はまだ明らかになっておりませんが、国・県・市町等がそれぞれ障害者就労施設等からの物品等の調達方針を定めることなどにより、受注機会の増大に努めることとされておりまして、工賃向上に向けた取り組みを後押しし、地域における障害者の自立促進に資するものと評価をしているところでございます。
県の工賃向上計画におきましては、対象となる各事業所が定めた目標工賃をもとに県全体の目標工賃を設定していることなどから、これを直ちに見直すことは考えていないものの、この法律の来年4月からの施行を受け、工賃向上に向けた取り組みをより一層推進いたしまして、その状況を踏まえて計画の内容や目標の見直しを検討してまいりたいと考えております。
答弁:農林水産部長
障害者の就労支援についてのうち、法人等の農業参入についてお尋ねがございました。
社会福祉法人等の農業参入につきましては、農業現場が抱える後継者不足や耕作放棄地の解消策の一つとなり、地域農業の多様な担い手確保にもつながること、また、福祉の視点からも、農業の持つ癒やしや安らぎの機能が心身のリハビリ効果を有することや障害者の雇用創出に寄与することなど、農業・福祉の双方に有益な面が多いと考えております。
このため、県では、これまでも農業大学校での技術研修や農地情報の提供、耕作放棄地の活用助成など、農業外からの企業参入に対する支援の中で、社会福祉法人等の農業参入についても取り組んできたところでございます。本年8月時点におきまして、新たに参入した法人57の経営体のうち、福祉関係は7つの経営体が参入している状況となっております。
今後とも、障害者の雇用創出にもつながるよう、これらの各種施策に加えまして、社会福祉法人を初め農業参入に意欲的な幅広い企業や団体を対象に、耕作放棄地とのマッチングや販売先との出会いの場づくりなど、就農開始から販路開拓にわたるきめ細かな支援に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。