社会資本の老朽化対策について - 質問 -
次に、社会資本の老朽化対策についてお伺いします。
本年3月31日、内閣府の有識者検討会が発表した「南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高について」によりますと、最大津波高は愛南町で17.3m、伊方町宇和海側で12.6m、また、最大震度は宇和島、新居浜、西条など7市で局地的に震度7、その他の市町で震度6弱から6強と、いずれもこれまでを大きく上回る新たな想定が示されました。
東日本大震災を教訓としたとき、私たちは、こうした新たな知見を踏まえ、あらゆる想定に対し備えを尽くさなければならないと思います。
昨年6月議会で、私は、災害に強い愛媛を目指す観点から、自助と共助を強化する必要性について取り上げました。その中で、児童生徒が率先して避難し難を逃れた釜石の奇跡について触れ、自助、共助の強化を具申しましたが、奇跡には続きがありました。
当初の避難先から、もっと上へ、さらに高台へと2度にわたり移動しながら難を逃れた子供たち、彼らが最後にたどり着いたのは国道45号線でした。しかし、道路は北側と南側で寸断されており、雪の降る中、そこは全くの孤立状況。幸いなことに、そのすぐ上に震災の6日前に開通したばかりの三陸縦貫自動車道釜石山田道路があり、子供たちはそこへよじ登り、日暮れを待って、無事救助されたといいます。
果たして、道路が開通していなければ、孤立から脱出できたかどうか。今、地元では、この釜石山田道路は命の道と呼ばれているそうですが、このことはまさに公助の重要性を示唆するものであります。
先ほど申し上げた地震と津波に関する最新の知見によれば、県土の約7割が中山間地域であり、海岸総延長が全国5位、河川総延長も全国9位という地理的特性を有する本県の社会資本整備とその強化は喫緊の課題であり、忍び寄る災害との時間との戦いと言えるでありましょう。
しかしながら、本県の今年度土木予算は約600億円、これはピーク時の平成7年度の約2,400億円に比べて4分の1程度の水準で、これでは十分な手を打とうにも打てないと言わざるを得ません。
また、御案内のとおり、道路、河川、護岸のほか橋梁や上下水道など社会資本の多くは、1950年代、60年代の高度経済成長期に全国一斉に整備されたのでありますが、原材料に使用されるコンクリートの耐用年数である50年、60年が経過しようとする今、老朽化とそれに伴う防災力の低下が各方面より指摘されております。
公明党では、こうした社会資本の老朽化に対応するため、命を守る防災・減災ニューディール政策を本年2月に発表し、政府に申し入れ、デフレ脱却と景気対策の観点からも、その早期実施を目指しているところであります。
そこで、お伺いいたします。
本県の社会資本に対する劣化及び老朽化の実態はどうか。また、最適な維持管理を実現するためのアセットマネジメントについて、どのような戦略で取り組もうとされているのか、御所見をお示しください。
また、今後10年間で長寿命化対策のための補修を実施するとした場合、年間にかかる費用及び10年間トータルでどれくらいのコストが見込まれるか、その見通しについてもあわせてお聞かせください。
社会資本の老朽化対策について - 答弁 -
答弁:土木部長
社会資本の老朽化対策についてのうち、3点、私の方からお答えいたします。
まず、アセットマネジメントの取り組みについての質問がございました。
本県が管理している道路や河川などの社会資本のうち、老朽化の目安である建設後50年を経過するものの割合は、平成21年度と41年度を比較すると、道路橋は14%が55%に、河川の水門、樋門は4%が42%に、港湾の岸壁は12%が64%になることから、多くの老朽化した施設の更新には膨大な費用がかかることが明らかになっております。
このため、県では、劣化状況の把握と将来の予測を行い、大規模な補修が必要になる前に予防的補修を実施するアセットマネジメントの手法を導入し、施設の延命化による補修・更新費用の縮減や平準化を目的とした長寿命化計画の策定に取り組んでいるところでございます。
施設ごとの長寿命化計画の策定については、県民生活への影響が大きい施設から順次着手しており、平成22年度に道路橋の長寿命化計画を策定し、既に計画的な補修を行っております。
その他の重要な構造物の計画については、道路橋での実績を踏まえながら、水門、樋門は平成25年度、港湾の岸壁は平成26年度をめどに策定することとしており、今後も、対象施設を拡大し、効率的かつ効果的な維持管理に努めたいと考えております。
次に、長寿命化対策のコストについての質問がございました。
土木部所管の社会資本のうち、河川や港湾などは、現在、長寿命化計画を策定中であり、補修や更新に必要な費用を算定できておりませんが、計画策定済みの道路橋だけでも、従来の対症療法的な対策では今後10年間で約88億円の費用となり、長寿命化対策を実施しても今後10年間で約55億円、年間で約5億5,000万円の多額の費用が必要となります。
このことから、その他の河川や港湾などを含めた社会資本全体の維持管理費には、厳しい財政状況の続く中、長寿命化対策を実施しても多大なコストがかかるものと想定されております。
答弁:県民環境部長
社会資本の老朽化対策に関しまして、本県防災力の総点検の実施についてお尋ねがございました。
県では、これまでも大地震の発生等を踏まえ、その都度、防災力の点検を行い、地域防災計画の見直しに反映させてきたところでありますが、昨年度は東日本大震災を教訓として地域防災計画検討会を設置し、地域防災計画修正の方向性を取りまとめるとともに、津波からの避難に関して、一時避難場所や避難路の安全性の確認を実施いたしましたほか、県主催の津波避難訓練を通じて市町に住民避難行動の点検を促すなど、市町と連携してソフト面での総点検を行ったところでございます。
また、県が管理する社会資本につきましては、従来より定期的な点検を行い、危険箇所や耐震化の必要な箇所を把握するとともに、重要構造物につきましては計画的に耐震工事を進めております。
このうち、県民生活上極めて重要な橋梁につきましては、耐震化が必要な414橋のうち、緊急輸送道路を優先して実施しました結果、平成23年度までに221橋が完了し、今後、残る橋梁につきましても、厳しい財政状況や重要性を勘案しながら、順次、耐震化を図ることとしております。
今回、国において発表されました南海トラフの巨大地震モデルは、これまでにないあらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震、津波を想定したものであり、県としましては、新たな南海トラフ超巨大地震対策特別措置法の制定など、責任ある支援を国に求めますとともに、今後示される新たな知見や現在実施している県の地震被害想定調査結果も踏まえ、市町と連携しながら、ハード、ソフト両面から防災力の総点検に取り組んでまいりたいと考えております。