過疎地域対策について - 質問 -
最後に、過疎地域対策についてお伺いいたします。
先日、山本博司参議院議員とともに、離島振興調査の一環で、中島地域の睦月島、野忽那島を訪れました。初夏を思わせる日差しの中、睦月島では約60名、野忽那島では約30名の皆様に御参集をいただきましたが、一見小規模のように思えるその数は、いずれも人口の約2割に相当。離島生活に対する住民の不安がいかに大きいか、肌身で感じてまいりました。
皆様から具体的にお話を伺う中で最も強く感じたことは、島嶼部が抱える生活課題の多くは、中山間地域を含めた県内の過疎地域全般に通じる共通課題であるということであります。したがいまして、今回は、離島振興の範疇にとどまらず、過疎地域全般に見られる課題を提起したいと思います。
住民の方々の声を幾つか御紹介いたしますと、「島民の交通手段は船しかない。ほかに選択肢がない。それを民間にゆだねているわけだが、経営はあくまでも採算ベース。少子化で利用者が減り、便数が減り、航路自体が順々に廃止され、それがまた過疎化に拍車をかけるという悪循環に陥っている」「この島もいずれ無人島になって中国や韓国に買われてしまうのではないか」。また、「遊休化した保育所を介護施設として活用させてもらっているが、厚労省の縛りがきつい。寒い冬の日でも火を使ってはいけないなど、不便きわまりない」。あるいは、「小学校が災害時の避難場所になっているが、かぎがかかって入れない。避難場所なら、あけておいてほしい」。そして、「空き家と廃屋が急速にふえてきた。荒れ放題の草木の管理や倒壊の危険性など、不安を抱えながら隣に住む身にもなってほしい」など、見えてくるのは共同体機能の低下もしくは不全であり、好まない表現ですが、いわゆる限界集落という厳しい現実であります。
かつて地域ごとに学校や医療、警察や消防などさまざまな公共施設がフルセットで設置され、共同体機能が円滑に維持されていたのも今は昔となりつつある今日、求められているのは、新しい共助社会を具体的にどのように描き、実現していくかということではないでしょうか。
その手法の一つが、定住自立圏構想と思うのであります。国では、市町村が主体的に取り組む政策として、同構想を平成21年度から全国展開しておりますが、これまで、本県を含め、全体的に遅々として進んでいない状況と伺っています。そこにはさまざまな理由があると推察します。
そもそも定住自立圏は、中心市と周辺市町が1対1の協定を結ぶことを基本とする市町主体の取り組みでありますが、県は、そのことにこだわらず、もっと積極的にこうした広域調整をサポートする必要があるのではないでしょうか。
そこで、お伺いいたします。
過疎地域の共同体機能の維持強化を図るためにも、本県における定住自立圏構想の現状と課題について、県はどのように認識しているのか。また、今後、どのように取り組んでいくのか、御所見をお示しください。
次に、過疎地域における公共交通事情についてであります。
先ほど、島民の交通手段は船以外に選択肢がないことに触れました。この現象は、中山間過疎地域でも同様に生じています。
そうした中、有人離島数全国1位の長崎県では、独自の取り組みとして、船を公設し運営を民間に任せる、いわゆる公設民営化で、乗船料を20%下げ、島民の方々に喜ばれているそうです。
また、先日、委員会視察で訪れた八幡浜市日土地区では、5年前から順次、路線バスが廃止となり、その後、立ち上がったNPO法人がデマンド運行を行い、唯一の交通手段を御苦労されながら担われている様子をつぶさに伺ってまいりました。
このように、過疎地域にとってなくてはならない公共交通は、本来、国の総合的な交通体系の中で確保されるべきと思いますが、待ったなしの地方にあって、今や官民一体となり、NPOなど新たな公共の担い手の協力を得ながら、懸命に支えているというのが現状であります。
そこで、お伺いいたします。
今後、さらなる公共交通の縮小・廃止が懸念される過疎地域において、県は、市町及び新たな公共の担い手とどのように連携し、その維持・存続に取り組もうとされるのか、御所見をお示しください。
さて、以上のほか、学校や保育所などの統廃合により遊休施設となったものの活用や、廃屋を含む空き家対策に関する要望も過疎地域共通の課題ですが、そこに浮かび上がるのは、縦割り行政の弊害や個人情報保護法といった国による法制度の壁であります。
公共施設である以上、地域の社会資本であり、財産です。それぞれ所与の目的については十分理解できますものの、地域社会の構造そのものが大きく変化した今、私は、施設の利活用における裁量についても、現実に即した形で柔軟な運用がなされるべきと思います。
また、空き家は個人財産ということもあり、行政の介入が難しい面もありますが、朽ちてしまえば、近隣にとっては不安と迷惑と危険以外の何物でもないのであります。結果的に放置されるとすれば、それは政治の努力不足と言わざるを得ません。
そこで、お伺いいたします。
本県過疎地域における遊休施設や空き家の利活用について、どのように取り組まれるのか。また、危険廃屋の解体・撤去についてどのように取り組まれるのか、あわせて御所見をお示しください。
過疎地域対策の最後は、医療事情についてであります。
睦月島、野忽那島とも、医療機関は診療所がそれぞれ1カ所あり、関係病院から週2回、医師が出張診療を行うということでありました。
お隣の香川県では、こうした過疎地域における医療需要に対し、かがわ遠隔医療ネットワーク事業(K-MIX)を平成15年度に県事業として立ち上げたそうです。
お話を伺いますと、これは、県と香川大学、医師会が協力し、複数の医療機関で診療情報や各種画像情報を共有できる情報基盤を構築し、活用するもので、現在は医師会事業として展開されており、経営的にも軌道に乗り、黒字で安定化しているとのことでした。
安価な利用料金であることや、パソコンとインターネットのみで参加できるといった参入のしやすさから、現在、沖縄県や岡山県などの県外を含む112の医療機関が参加しているそうです。特筆すべきは、その大半が19床以下の診療所であるということです。
K-MIXを活用することで、遠隔地での画像診断が可能となり、地域内での患者紹介や、急性期から回復期、さらには在宅までの地域連携クリティカルパスの導入もスムーズに行え、今後は在宅での療養生活を支える介護施設にも拡大していく予定とのことでした。
こうしたICT(情報通信技術)を活用した遠隔医療を初め、医療・福祉の情報ネットワークの構築は、医師不足の過疎地域にとって大いなる光明ですし、私は、本県でもこうした医療環境の整備を早急に進めるべきと考えるのであります。
そこで、お伺いいたします。
本県における遠隔医療の実施状況と今後の課題について、御所見をお示しください。また、ICTを活用した地域医療連携システムの構築に向けてどのように取り組んでいかれるのか、あわせてお聞かせください。
以上で、私の質問を終わります。 御清聴いただきまして、大変にありがとうございました。(拍手)
過疎地域対策について - 答弁 -
答弁:企画振興部長
過疎地域対策についてのうち、私から3点お答えをさせていただきます。
1点目は、定住自立圏構想についてのお尋ねでございます。
定住自立圏構想は、地域の中心市と周辺の市町村が自主的に協定を結び、中心市が圏域全体の暮らしに必要な都市機能を集約的に整備し、周辺市町村においては農林水産業の振興を図るなど、相互の役割分担のもと、連携、協力しながら圏域全体の活性化を図ろうとするものであります。
圏域形成に当たっては、広域的な合併を行ったところで一定の要件を満たせば、特例的に合併1市でも対応が可能なことから、本県で唯一取り組みが進んでいる今治市は、このタイプとして事業を推進してきましたが、それ以外の地域には表立った動きがないのが現状であります。
その要因としては、合併が大幅に進展した本県では、新しい市や町の間でさらに中心市を選ぶことや、あるいは合併後の1つの市においてさらに中心地域を定めることは、住民感情を考慮すると理解が得られにくく、加えて、制度的にも、21年度に措置された交付金が1年限りで廃止され、インセンティブが弱くなったことなどが影響しているものと思われます。
しかしながら、少子高齢化や人口減少が進行する中で、将来にわたって維持・発展が可能な地域社会を形成していくためには、経済、社会的関係が深い地域間や市町間の相互連携が不可欠であることから、県といたしましては、定住自立圏構想を目指す市町の機運が高まるよう、情報提供や助言に努めるとともに、市町の定住自立に向けた取り組みに対して、新ふるさとづくり総合支援事業等を通して積極的に支援を行ってまいりたいと考えております。
次に、公共交通の維持・存続についてのお尋ねでございます。
過疎地域においては、人口の減少や高齢化の進行で公共交通の利用者が減少し、バス路線や航路の維持が困難となるなど、住民の移動手段の確保が特に重要な課題となっております。
県では、こうした厳しい現状を踏まえて、本年4月、地域公共交通の活性化を図るための指針を策定したところでありまして、その中で、過疎地域等における公共交通の維持・確保に向けては、まずは、住民自身が地域全体で公共交通を守り育てるという意識を持ち、地域公共交通を支える主体となってもらうことを基本に、市町がリーダーシップを発揮し、交通事業者やNPO法人、地域住民等と十分に協議しながら、直面する課題はもとより、人口や世帯数の将来予測を踏まえた中長期的な課題も見据えて、地域に最適な交通体系の導入に取り組んでいくこととしております。
このため、県といたしましては、地域全体での取り組みが促進されるよう、各地方局に設置している地域交通活性化地区協議会での議論も進めながら、市町に対する支援に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
3点目は、過疎地域における遊休施設や空き家についてのお尋ねでございます。
県内では、市町村合併や人口減少、少子化の進展により、学校や保育所などの市町の施設が遊休化する例が少なからず見受けられ、また、空き家についても、総務省の調査によると、平成20年10月現在、総住宅戸数の15.1%に達しておりまして、これまで一貫して増加傾向にあります。
このような中、国の補助を受けて整備した施設は、木村議員お話のとおり、目的外の使用には一定の制約がありますが、近年、規制の緩和が図られたことなどから、市町においては、廃校を宿泊施設など地域活性化の拠点施設などとして有効に活用するケースもふえております。
また、空き家については、市町が改修の上、移住希望者に貸し出すなど、空き家をふやさず、地域振興にもつなげるという一石二鳥の取り組みも一部では見られるところであります。
さらに、県におきましては、市町などとともに、えひめ移住交流促進協議会を組織し、県内の空き家情報を一元的に提供するえひめ空き家情報バンクをインターネット上に開設しており、また、今年度から新たに、市町が遊休施設や空き家を移住体験住宅として整備することに対し、県費助成を行うこととしたところであります。
今後とも、こうした施設が地域の実情に応じて有効に活用されるよう、市町に対して適切なアドバイスや各種支援制度の情報提供に努めたいと考えております。
また、空き家が老朽化し、危険な状況となる事例が増加していることは、県としても重要な課題であると認識しておりまして、これらの解体・撤去は市町を事業実施主体とする国の補助制度が活用できることから、関係市町に積極的に働きかけるなど、健全な地域社会づくりに努めてまいりたいと考えております。
答弁:保健福祉部長
情報通信機器を用いた遠隔医療システムは、平成20年に厚生労働省が実施した医療施設調査によりますと、県内でも、専門医の画像診断による主治医への支援等、21医療施設で導入されておりまして、患者の利便性の向上や、離島、僻地などにおける医療の地域差の是正など、地域医療の充実を図る手段の一つとして期待されているところでございます。しかしながら、遠隔医療を診断や治療に本格導入するに当たっては、医師による直接の対面診療と同等の有効性、安全性の確立、設備投資や運営に要する費用の確保等の課題も指摘をされておりまして、県では、今後の情報技術の進展や医療制度の動向等を十分に注視しながら、適切に対応していく必要があると考えております。
こうした中、現在、県医師会が中心となって、ICTを活用した医療機関同士の情報共有と連携を推進する全県的なネットワーク基盤の構築が進められており、また、松山圏域においても、救急病院と後方支援病院の空床情報を一元管理するシステムの構築に着手するなど、各圏域でICTを活用した取り組みがスタートしております。
県といたしましても、これらシステム導入に必要な経費を補助し、医療分野へのICT活用を推進することとしておりまして、これらの取り組みにより情報共有と地域医療連携を促進し、県内どこでも安心して医療を受けられる環境整備に努めてまいりたいと考えております。