「次に、若年層の婚姻増に向けた取組みについてお伺いいたします。
2023年のわが国の合計特殊出生率は1.20と、統計を取り始めて以降最も低くなりました。2022年に比べ0.06ポイント低下し、8年連続で前の年を下回ったとのことで、加速する少子化になかなか歯止めがかからない状況が続いています。
本県におきましても国と同様に、2023年の合計特殊出生率は1.31で過去最低を記録し、2年連続、前の年を下回る結果となりました。さらに出生数と婚姻件数を見ますと、2023年の出生数は6,950人、婚姻件数は4,158件と、いずれも10年前と比べ約3割減少しています。
この間、県におかれましては市町と連携し、若年層の出会いの場の創出、妊娠・出産・子育て支援、仕事と家庭の両立支援など、様々な少子化対策事業を積極果敢に展開されてきたと評価しております。
そうしたご尽力にも関わらず、なかなか出生率の低下に歯止めがかからない厳しい現実に対し、求められる次の一手はどうあるべきなのか。
ニッセイ基礎研究所の人口動態シニアリサーチャーの天野馨南子氏は、EBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング)に基づく施策立案が重要とした上で、少子化対策の最大のポイントは婚姻数にあると指摘しています。
ニュースなどで出生率1.20と聞くと、夫婦が持つ子どもの数は平均で1.20人だと思いがちですが、天野氏は、この誤解こそが、わが国の少子化対策のあり方と有効性を低下させてきたと述べています。
出生率の計算は、既婚女性と未婚女性の人数の割合によって大きく影響を受けます。
私も自ら計算してみたところ、計算の対象となる15歳から49歳までの女性の出生数を分子に、未婚女性数と既婚女性数の合計を分母において出生率を計算しますと、確かに、分母における未婚女性の割合が増加すれば、既婚女性1人当たりの出生数が同じであっても、出生率が低下することがわかりました。
逆に既婚女性のみで出生数を計算した場合、つまり完結出生児数で見ると、実は約2人と50年間ほぼ横ばいで推移しており、結婚した夫婦が持つ子どもの数はほぼ変わらず、出生率ほどの低下は見られないということになります。
1970年と2020年の国勢調査を比較すると、この半世紀で、出産の対象となる女性人口の減少スピードのほぼ2倍のスピードで婚姻数が減少していることがエビデンスにも明らかで、これらを踏まえますと、出生率低下の主な要因は未婚女性の増加であり、出生率の向上を図るためには婚姻数をどのように増やすかということが、出生数の増加はもちろん、少子化対策全体にとって極めて重要な視座を与えるといえるのではないでしょうか。
そこで、お伺いいたします。
令和7年度当初予算案では今年度より10億円増額し、人口減少対策に重点的に取り組むとされていますが、県として市町及び官民の連携を図りながら、少子化対策の推進に向け、「若年層の婚姻増」に、より一層取り組んで頂きたいと考えますが、見解をお聞かせください。」
〈答弁概要:中村知事〉
「県では、出生数との相関が強い婚姻件数に、いち早く着目し、加戸前知事の時代に立ち上げられた、えひめ結婚支援センターを拡充してまいりました。それを核とした婚活支援により約1,600組の成婚に、これは報告されている件数だけでございますので、もっと実際はあるかもしれません。1600件の成婚に繋げるとともに、今年度は学びや体験を通した自然な出会いや、仮想空間を活用した内面重視の出会いの支援により、参加者の8割以上がその後の交流に繋がったほか、新たに配置した結婚支援連携推進員を活用し、市町や企業との連携強化にも努めているところでございます。
一方、20代、30代の女性が結婚をためらう理由として、約4割が仕事や家事・育児、介護を背負うことへの不安を挙げているとの調査結果があるなど、婚姻件数の増加に向けては、固定的性別役割分担意識の解消を図り、若い世代が結婚に前向きになれる環境整備も重要であることから、ひめボス認証制度によりまして、仕事と家庭の両立支援に取り組む企業を強力に後押しするほか、男性の家事参画や育休取得支援の啓発にも取り組んでいるところでございます。
来年度は、若年層の交流機会を拡充するとともに、県や市町、結婚支援センターのイベント情報を集約するプラットフォームを構築するほか、多様な家族の形の紹介により、幅広い世代の意識変容を促し、若い世代の結婚への不安の解消を図るための経費を当初予算案に計上させていただきました。引き続き、社会全体で共働き・共育てを応援する機運を醸成し、若者の婚姻数増加に向けて取り組んでまいりたいと思います。」
- 投稿者
- 木村誉
- 投稿時刻
- 17:31