「視覚障がい者に対する防災情報の伝達についてお伺いいたします。
2011年の東日本大震災における障がい者の死亡率は、住民全体の死亡率の約2倍と言われています。自力で避難することが難しく、逃げ遅れたことが主な原因と見られますが、そうした方々への公助はどうあるべきか、その後、全国各地でさまざまな検討と取組みが行われてまいりました。
災害対策基本法の基本理念には、防災計画を作成する時や災害発生時の想定をする際、被害の最小化及び迅速な回復を図る時は、高齢者、障がい者、乳幼児、その他の特に配慮を要する者、いわゆる要配慮者の事情を踏まえ、適切・必要な措置を講じるという考えが貫かれています。
また水防法では、浸水想定区域がある市区町村の長は、国土交通省令で定めるところにより、住民や滞在者に周知するためハザードマップ等を配布するなど必要な措置を講じなければならないとあり、都道府県は区域における水防管理団体が行う水防が十分に行われるように確保すべき責任を有するとあります。
従いまして、自助が困難な視覚障がい者に対して、ハザードマップ等の災害対策情報を伝える仕組みを整えていくことは、私は県として果たすべき大事な役割と考えるのであります。
一方、2021年に国土交通省が実施したアンケートによりますと、障がいに対応した水害ハザードマップを作成している自治体は、「作成中・検討中」を含め、全体のわずか5.9%にとどまっています。
そうした中、青森県、秋田県、富山県、石川県、熊本県や全国の政令市等で近年、広がりを見せているのが「耳で聴くハザードマップ」の導入です。
これは水防法が想定する「目で見るハザードマップ」とは異なり、スマホアプリをダウンロードし、音声で災害リスク等の情報を聴くことができるハザードマップです。
アプリには、視覚障がい者に不可欠な読み上げ機能はもちろん、洪水ハザードリスク情報を音声で提供したり、GPS機能を活用し、現在地から最寄りの避難場所へのルートについて音声と方向を示す効果音で誘導する機能などが備わっています。
昨年の能登地震の発災時、富山県の視覚障がい者の方がアプリをその場でダウンロードし、活用したところ、すぐに災害関連の情報が表示され、適切な情報を音声で確認することができ本当に助かった、感動したとの声が寄せられています。
2022年5月施行の障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法では、障がい者が障がい者でないものと同一内容の情報を同一時点において取得できるようにすることが基本理念に示されています。
障がい者の死亡率が住民全体の死亡率の約2倍であったという東日本大震災の教訓に鑑み、同法の趣旨に照らしますと、健常者との情報格差解消に向けた防災減災対策の推進は極めて重要で、私は、防災減災対策に“福祉”の視点を取り入れ、視覚障がい者に対する公助のしくみを構築していくことは、本県にとって喫緊の課題であると考えます。
「耳で聴くハザードマップ」は、県が導入すればすべての市町が利用でき、導入後は県から全市町に周知を行い、市町において視覚障がい者がもれなく利用できるような告知や案内がなされれば、防災減災対策の観点からも、又、当事者にとっても物理的、精神的に、どれほど安心が広がることでしょう。
そこで、お伺いいたします。
本県におかれましても、視覚障がい者に対する公助の一環として、災害リスク情報を音声で伝える「耳で聴くハザードマップ」は大変有効と考えますが、視覚障がい者をはじめ障がい者への防災情報の伝達に、今後、どのように取り組んでいくのか、見解をお示しください。」
〈答弁概要:防災安全統括部長〉
「県では、避難情報や避難場所、気象情報など防災情報を県民一人ひとりに、分かりやすく正確に伝えるため、防災行政無線をはじめ、ホームページや防災メール、SNS等の様々な手段を活用し、きめ細かな情報提供を行っており、一人でも多くの命を守るためには、災害時に配慮が必要な障がいのある方に対し、迅速かつ丁寧に正しい情報をもれなく伝達することが重要と認識しております。
このため、えひめの防災ポータルなど県のホームページに音声読み上げ機能を備え、視覚障がいのある方も利用できる環境を整えているほか、防災イベント等でハザードマップ上に災害リスクが文字で表示される機能や音声読み上げ機能が追加された国の防災ホームページの活用を広く呼びかけております。
また、青森県などで運用が開始された現在地周辺のリスク情報をプッシュ通知できる「耳で聴くハザードマップ」の有効性や課題についても情報収集を進めているところでございます。
今後とも、障がいがあるなど防災情報の取得が困難な方に寄り添った情報発信に努め、現在地のリスク情報や最寄りの避難所へのルートを入手できる音声機能や文字表示機能付きのハザードマップ等、より使いやすいツールの導入を積極的に検討するなど、「伝わる」ことを強く意識し、迅速かつ確実な防災情報の伝達に取り組んでまいりたいと考えております。」
- 投稿者
- 木村誉
- 投稿時刻
- 17:27