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2014年 9月定例会(9/19)

テーマ防災・減災対策

土砂災害対策について(2014年9月定例会)

土砂災害対策について - 質問 -

公明党の木村誉でございます。
本年7月30日から8月26日にかけて発生したいわゆる平成26年8月豪雨は、1道2府34県の広範にわたり甚大な被害をもたらしました。お亡くなりになられた方々の御冥福を心からお祈りいたしますとともに、被災者の皆様に衷心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
一日も早い復旧・復興と安寧を祈りつつ、会派を代表し、質問に入らせていただきます。

初めに、土砂災害対策についてお伺いいたします。

8月20日未明、隣県広島県の広島市北部地域で発生した土砂災害は、死者74人に上るなど、多大な人的被害をもたらしました。

国交省によりますと、一定地域に集中して豪雨が降り続くバックビルディング現象により、3時間の雨量が観測史上最高の217.5㎜を記録したとのこと。形容しがたい異常な降り方であり、もろくて崩れやすい真砂土が堆積岩や流木とともに大量の土石流となって民家を襲い、被害を増幅させたと言われています。

先日、私は、公明党議員有志とともに、今回最も被害が大きかった安佐南区の八木地区を訪れました。県道270号線から阿武山の尾根沿いに住宅が建ち並ぶ八木地区は、想像以上に傾斜が急峻で、そこから土石流発生地点を見上げると、ほぼ直滑降といった角度で山頂が迫って見えました。

既に発生から3週間経過していましたが、目にした被災地の光景は言語に絶するものでした。更地になった住宅跡地、えぐり取られた家屋、1階部分を土砂が塞いだアパート、至るところに積み上げられた土のうの数々。

あの日、源頭部で崩壊した真砂土が、巨岩や樹木を削り取りながら、時速100キロを超える土石流となって家屋をのみ込み、そして、多くのとうとい命を奪い去ったその爪跡を目の当たりにしながら、犠牲者の御冥福を祈念いたしますとともに、今回の土砂災害を未来への教訓とさせゆくことを決意いたしました。

御承知のとおり、広島県は、今から15年前の1999年にも犠牲者30人を超す豪雨災害に見舞われており、これをきっかけとして、翌年、土砂災害防止法が制定されました。

同法は、土砂災害の危険性がある警戒区域と、住民の生命等に著しい危害が生じるおそれのある特別警戒区域を指定し、住民への危険周知や避難体制の整備などの対策を進めるものでありましたが、今回被害に遭った区域の大半が警戒区域に指定されておらず、15年前の教訓は残念ながら生かされませんでした。

しかし、これは決して他人事ではありません。まだ指定されていない区域や危険な既存造成地は、本県を含め、全国に余りにも多く存在しているからです。

現在、政府では、警戒・特別警戒の区域指定が進むような法改正を初め、財政面、技術面での支援強化について検討を進めるとしており、その早期実現に期待を寄せるものでありますが、実際に砂防ダムや地盤改良工事といった抜本的な対策を講じるには、多大な時間と費用がかかるのも事実です。

昨今の異常気象からすると、台風も豪雨も時と場所を選ばず発生し得るのであり、本県として、あらゆる英知を総動員して、迅速に打てる手を打たなければなりません。

今回上程された9月補正予算案には、土砂災害を防止する砂防施設の整備に5億850万円、崖崩れ防災対策の促進に2億250万円など、県単独の緊急防災・減災対策事業として43億5,200万円が計上されています。広島土砂災害を踏まえた速やかな対応を高く評価するとともに、県民の一人として感謝申し上げたいと思います。

さて、国交省では、今回の被害拡大の主な原因として、被害現場の多くが警戒区域や特別警戒区域に指定されておらず、危険性が住民に伝わっていなかったことや、土砂災害警戒情報の発表が避難勧告につながらなかったことなどを挙げております。いずれも防災対策のソフト面における課題です。

加えて、マスコミ報道でも避難勧告のおくれを指摘する声が多く聞かれるところではありますけれども、私が現地で伺った話によりますと、少し異なる様相が見えてまいりました。

そもそも、深夜の3時から4時という寝静まった時間帯において、全ての住民に勧告を伝えることができるのか。あるいは、毎時100ミリを超える豪雨は爆音レベルであって、防災無線は全く聞こえなかった。また、避難勧告をキャッチしたが、とても外に出られる状況ではなかった。さらには、救急事態が生じたため119番に電話したが、回線がパンクしていてつながらなかったというふうに、避難勧告のおくれという単純な問題ではなく、情報提供や避難のあり方に根本的な懐疑を寄せる意見が多く聞かれたという点です。

中には、避難勧告を聞いて避難しようと思ったが、2階に上がって事なきを得た。外に出ていたら、恐らく直後の濁流にのまれていたと思うといった意見もありました。

この方のとっさの機転は、垂直避難と言われるものですが、これまでの災害が発生し避難勧告が出たら、最寄りの避難所へ避難するといった型どおりの避難行動だけでは決して十分ではないということを示唆するものであります。

このように、現地に足を運び、改めて私が痛感させられたのは、災害発生時の初動において決定的に重要なのは自助であり、要援護者を含めた共助であるということでした。先ほどの国交省の分析にも見られたソフト面の強化、これが何にも増して求められると思うのであります。

私たち一人一人が地域の特性を知り、そのときどう対応したらよいかを自主的に考え、防災訓練など地域の活動には日ごろから積極的、能動的に参加していく。これは、到達点としてはかなり高い目標です。が、私たち県民の意識をそこまで上げていかなければ、今回の広島土砂災害のような事態に遭遇した場合、被害を減じることは難しいと思うのであります。

そこで、お伺いをいたします。

まず、本県の土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定状況及び課題と今後の取り組みについてお聞かせください。

次に、今回の広島土砂災害を教訓として、本県における災害発生時の住民への情報提供や避難のあり方について、どのように考え、どう改善・強化を図るのか、御所見をお示しください。

そして、災害に強い愛媛、命を守る県政を実現するために、私は、いずこであれ、発災時において自助と共助が自発・能動的に行われる、そういう地域づくり、人づくりを目指すことが重要であると考えますが、今後、どのように取り組んでいかれるのか、見解をお示しください。 ”

土砂災害対策について - 答弁 -

答弁:中村時広知事

まず、木村議員に、災害に強い愛媛づくりに向けての御質問についてお答えをさせていただきます。

発災直後の初動段階においては、みずからの安全はみずからで守る自助と、地域においてお互いに助け合う共助を推進することが重要であり、平常時から県民一人一人の防災意識を醸成し、積極的、能動的に行動できる環境を整えておくことが必要であると考えます。

このため、県では、自助を促進する取り組みとして、防災意識啓発講演や減災キャンペーンの実施、防災リーフレットや南海トラフ巨大地震体験版DVD等の配布など、さまざまな機会やツールを活用し、県民の防災意識の啓発に努めているところであります。

また、自主防災組織やその活動の核となる防災士の育成に努めております。愛媛県では、県下の市町と連携して、この防災士育成事業を立ち上げておりますが、本年6月末現在で自主防災組織の組織率は92.4%、防災士の人数は4,855名と、ともに全国でも上位、特に防災士は全国47都道府県で第3位となっておりますけれども、さらにこれらを強化するため、自主防災組織の一層の活性化を図るとともに、防災士につきましても、今後、3年間でさらに1,300人を育成するほか、地域の防災リーダーであるえひめ防災インストラクターの育成にも取り組むなど、共助を担う組織づくり、人づくりを積極的に推進し、地域防災力の向上を図ることとしています。

今後とも、県においては、市町や関係機関、企業等との連携のもと、公助の取り組みはもとより、自助・共助の取り組みの充実強化に努め、チーム愛媛で災害に強い愛媛の実現を目指してまいりたいと思います。

答弁:土木部長

まず、土砂災害対策についてのうち、警戒区域等の指定についてお答えいたします。

本県は、土砂災害危険箇所が約1万5,000カ所と非常に多いため、土砂災害警戒区域等の指定は、人家が多い箇所や病院、老人ホーム等がある箇所を優先するなど、平成16年度から効果的、計画的に取り組んできたところでございます。

しかしながら、指定に必要な基礎調査に時間と費用を要すること、住民の理解を得られるよう丁寧に説明してきたこと、さらに、地元の要望が強い施設整備に重点を置いてきたことなどから、警戒区域は2,266カ所、特別警戒区域は2,030カ所にとどまり、指定率は全国に比べて低い状況にあります。

このような中、今回の広島での土砂災害におきましては、警戒区域等の指定のおくれが被害拡大の一因とされていますことから、本県におきましても、より一層の指定促進を図る必要があると考えています。

このため、人家5戸以上の土砂災害危険箇所6,796カ所のうち、既に指定済みの箇所や緊急度の低い箇所を除く2,358カ所について、平成29年度までの3カ年で指定できるよう努力してまいりたいと考えています。

県としましては、住民の早目の避難につながるよう、警戒区域等の指定や土砂災害警戒情報の提供などのソフト対策の充実を図り、今後とも、ハード対策と一体となった総合的な土砂災害対策を積極的に推進してまいりたいと考えています。

答弁:県民環境部長

まず、土砂災害対策のうち、住民への情報提供や避難のあり方についての御質問にお答えさせていただきます。

発災時における被害を最小限に抑えるためには、住民への迅速かつ的確な情報提供や、災害や地域の特性に応じた避難方法の確立は非常に重要であると考えております。

本県におきましても、災害時に市町が防災行政無線や防災ラジオ、広報車等により迅速に情報提供をいたしますとともに、県におきましても防災メールや防災ウエブを活用し情報提供を行うなど、市町と連携して複数の情報伝達経路を確保しているほか、気象情報のうち、特に土砂災害警戒情報につきましては、市町に直接電話連絡をした上で、避難勧告等の適切な対応を講ずるよう助言をしているところでございます。

また、避難のあり方につきましては、避難訓練等を通じ、日ごろから避難方法の確認や住民の意識醸成に努めておりますが、災害対策基本法や本年4月に改正されました国の避難勧告等に関するガイドラインにおいて、屋内にとどまって安全を確保することも避難行動の一つとの新たな考え方も示されておりますため、現在、市町が行っております避難勧告等の見直しの中で、災害の特性や地域の実情に応じた避難のあり方についても検討するよう、市町に働きかけてまいりたいと考えております。

なお、広島市の土砂災害では、住民への迅速かつ的確な情報提供や避難のあり方について、さまざまな問題点が指摘されておりまして、県としても、今回の事案を十分に検証して、課題解決に向けまして市町等と協議検討を進めてまいりたいと考えております。

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