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2011年 6月定例会(6/30)

テーマ防災・減災対策

いわゆる「釜石の奇跡」について(2011年6月定例会)

いわゆる「釜石の奇跡」について - 質問 -

次に、いわゆる釜石の奇跡についてであります。

これは、岩手県の死者・行方不明者全体の2割近い1,200人以上の犠牲者を出した釜石市にあって、市内の小中学生のほぼ全員が無事に避難することができたという事例でありますが、未曾有の大難にあって、まさに奇跡と言えるでありましょう。

振り返りますと、あの日、釜石東中学校では、大きな揺れが5分ぐらい続くさなか、「津波だ、逃げるぞ」と、全校生徒がだれともなく大声を上げて全速力で走り始めたのだそうです。驚くのは、これが学校から避難指示が出る前の判断であったことです。

そして、中学校の近くの鵜住居小学校では、全校児童を校舎の3階に避難させていましたが、中学生が一斉に避難するのを見て、すぐに合流し、避難先のグループホームにたどり着き、その裏山のがけが崩れかけているのを発見するや、「先生、ここじゃだめだ」と、高台にある介護福祉施設を目指してもう一度走り始めたのです。

その約30秒後、最初に避難したグループホームは津波にのまれ、間一髪で助かったのでありますが、恐怖と不安の入り混じる緊迫した場面で、彼らはなぜこのような奇跡をなし遂げることができたのでしょうか。

そのことについて、釜石市の防災危機管理アドバイザーの片田敏孝群馬大学大学院教授は、自分の命は自分で守るという日ごろの防災教育の成果と述べられています。その中で片田教授が徹底して教えたのは、防災の知識そのものではなくて、自助という考え方と姿勢であり、具体的には次の3原則でありました。

それは、第1に、想定にとらわれない、第2に、その状況下において最善を尽くす、そして第3に、一人一人が率先避難者となるという原則ですが、釜石の奇跡では、この3原則が見事に実践されていることがわかります。

それは同時に、片田教授のもと、津波防災教育のための手引きを作成し、市内の全小中学校で津波防災教育に取り組んできた釜石市の成果でもあります。

さらに、教授は、日本の防災に欠けているのは、自分の命を守ることに対して主体性をなくしていることと指摘し、行政に対しては、これに従っていれば大丈夫ですという形から、自分の命を守るのはあなた自身です、あなたがベストを尽くすことを行政はサポートしますという形への発想の転換を力説しています。

そこで、お伺いいたします。

まず、釜石の奇跡に見られる防災教育の重要性について、県はどのように認識し、本県において今後どのように取り組んでいかれるのか、見解をお示しください。

また、片田教授が指摘される、自分の命は自分で守るとの自助意識を涵養する防災教育の角度と、あなたがベストを尽くすことを行政はサポートしますという行政サイドの発想の転換の必要性について、私は、本県の防災力強化を考える上で非常に重要な視座を与えるものと評価いたしますが、これに対する御所見をお示しください。

いわゆる「釜石の奇跡」について - 答弁 -

答弁:教育長

木村議員にお答えをいたします。
釜石の奇跡に見られる防災教育の重要性について、県はどのように認識し、今後、どのように取り組んでいくのかとのお尋ねでございました。

釜石の事例からは、防災教育において、小中学生が災害発生時に自分の命は自分で守るとの主体性を持って、個々の現象に即して予断を持たずに適切な判断を行い、最善の行動をとることの大切さを再認識したところでございます。

県教育委員会におきましても、これまで学校における安全教育の一環として、「学校安全の手引き」を県内すべての学校に配布いたしまして、災害時はもとより、生活や交通の面も含め、さまざまな状況において児童生徒一人一人の防災に関する能力を高めるため、発達段階に応じて指導を行ってきているところであります。

今後とも、釜石の事例も参考にしつつ、地域や家庭と連携したより実践的な避難訓練を初め、災害に関する理解を深める各教科での授業の工夫や、被災地派遣教職員の体験談等の活用などの取り組みを積み重ねることによりまして、子供たちが適切な意思決定や行動選択のできる知識、能力を身につけられますよう、防災教育の一層の充実を図ってまいりたいと考えております。

答弁:県民環境部長

次に、いわゆる釜石の奇跡についてのうち、自助意識を涵養する防災教育の角度と、行政サイドの発想の転換の必要性についての所見はどうかとのお尋ねでございます。

県におきましては、県民の主体性を前面に押し出した防災体制を確立するため、平成18年に愛媛県防災対策基本条例を制定し、防災対策は、県民がみずからの安全はみずからで守る自助を実践した上で、地域において互いに助け合う共助に努めるとともに、県及び市町がこれらを補完しつつ公助を行うことを基本理念と定めまして、自助の促進に努めているところでございます。

県民一人一人に主体的な自助意識を根づかせるためには、子供のころからの防災教育が重要であるとの観点から、県、市町、愛媛大学などで構成する愛媛地域防災力研究連携協議会の防災教育研究会で、小中学生を対象に、フィールドワークや防災マップづくりを通じて、自分たちで考え、話し合い、発表する防災教育カリキュラムの開発等に取り組んでいるところでございます。

今後とも、県民の自助の取り組みに対して行政はサポートするという発想で、まずは自助意識の涵養に努め、防災力の強化に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

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