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2010年 12月定例会(12/14)

テーマ未来世代対策

がん対策について(2010年12月定例会)

がん対策について - 質問 -

続きまして、がん対策についてお伺いします。

御案内のとおり、愛媛県議会がん対策推進議員連盟の発議による愛媛県がん対策推進条例が、本年2月、全会一致で可決、成立をいたしました。

このように申し上げるだけで、今なお鮮やかにその瞬間の感動がよみがえってまいりますが、議連の一員として、そのときかたく誓った決意は、今なお揺るぐことはありません。それは、条例の前文に掲げた理念の実現であります。すなわち「がんになってもお互いに支え合い、安心して暮らしていける地域社会の実現」であります。

県民の皆様にそのように実感していただける愛媛になるための第一歩、それが私自身の決意であり、全会一致の総意でありました。ゆえに、本年4月の条例施行とともに、そこに描かれた未来に対する責任もまた、深く自覚せずにはいられないのであります。

そこで、今回は、条例施行後の本県がん対策の進捗状況について、幾つかお伺いしたいと思います。

まず、条例第12条に基づき設置された愛媛県がん対策推進委員会についてであります。

初会合が去る8月31日に、第2回会合が11月19日にそれぞれ開催されたと伺いましたが、県のホームページにアップされた第1回目の開催概要を早速拝見するとともに、県当局、また、何人かの委員の皆様からもその様子をお聞かせいただきました。それによりますと、大変活発な議論が交わされたそうで、ある方は、県が主催する会合でこれほどのかんかんがくがくはかつて見たことがないとの感想を述べており、思わず手をたたいてしまったほど私は感動したのであります。

その議論の中から、本日は2点取り上げたいと思います。

その第1は、患者御家族の相談支援についてであります。

現在、県下7カ所のがん診療連携拠点病院内にがん相談支援センターが開設されておりますが、患者御家族の利用率は10%に満たないとのことで、その多くが病院外に相談先を求める傾向があるそうです。

理由はさまざま考えられますが、やはり患者御家族の心の中にある複雑多様な感情や本音を、お世話いただいている病院に対してぶつけるということは大変なストレスであり、相当の勇気を伴うといったことが、利用率の低さ、すなわち相談のしにくさにあらわれていると言えるのではないでしょうか。だからこそ、患者には気軽に何でも言える第三者的な相談拠点が絶対必要だ。これは、一昨年8月、笹岡議員とともに視察したがん相談センターこうちでの安岡センター長の言葉ですが、その意味を今、改めてかみしめるのであります。

一方、本県がん対策推進議員連盟では当初、会長から、患者御家族の身近な相談拠点がんサロンを県内全市町に設置したいとの方向性が示され、その手始めとして、本年7月22日、内子町議会に対して申し入れを行ったのであります。これには岡田議連会長、玉井事務局長、佐々木理事とともに私も同行させていただきましたが、町議会各位には非常に前向きなお受けとめをいただき、改めて敬意を表したいと思います。

そして、今後がんサロンが、会派を超えて地域を手分けしながら20市町全体に広がりゆくよう、がん議連が一丸となって推進できればと念願いたします。

そこで、お伺いいたします。

まず、愛媛県がん対策推進委員会の御要望、また、条例第8条1項に基づき、患者、御家族が抱かれる複雑多様な感情や本音を気軽に思い切りぶつけられるがん相談センター愛媛(仮称)を設置するとともに、各市町におけるがんサロンの設置や、既存のがん診療連携拠点病院内がん相談支援センターのさらなる充実を視野に入れた、患者を起点とした重層的な相談支援ネットワークを県の主導により構築すべきと考えますが、そのあるべき姿について見解をお聞かせください。

お伺いの第2は、がん対策基金についてであります。

がん対策の推進と医療環境の向上には、言うまでもなく財源が必要です。深刻が続く本県財政においてこれを行うには、確固たる信念に基づいた施策の選択と集中が求められます。それは理事者におかれては、まさに苦渋と言うべき労作業であるに違いなく、私たち議会もまた、県民総ぐるみをうたう条例の精神に照らし、その果たすべき役割を考えるとき、県民の皆様に御理解と御協力を得られるような県民基金の設置は考えられないかと思うのであります。

がん対策基金は、既に全国7つの県において実施されており、そのうち最も早いのは、昭和61年2月の富山県がん対策基金で、県、市町村、民間からの出捐により造成した基金の運用益をがん予防の普及啓発事業に充てることを主な目的としています。また、直近では、本年2月に徳島県AWAがん対策募金が、NPO法人を実施主体として、がん患者への経済的支援を主な目的に立ち上がりました。

各基金のスキームは、その目的や目標とする金額、実施主体や運営方法など7県7様で、それぞれの地域のニーズに基づき、着実に成果を上げられているそうでありますが、ここで重要なことは、地域のニーズに基づきという点にあるのではないでしょうか。

翻って、本県の患者、御家族のニーズはどうか。先ごろ、NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会が、県内がん患者512名を対象に行った愛媛県がん患者満足度調査によりますと、がん医療についての意見、希望のうち、28%と最も多かったのは治療費負担の軽減でありました。その回答分析によると、がん治療費のための月当たりの医療費は平均値で17.6万円であり、その負担解消に高額療養費制度は助かるとの声は多いものの、約3割の患者が、がん治療費は他の疾病に比べて医療費が高く、今後の治療の継続が危ぶまれると回答しているのであります。

愛媛県がん対策推進条例が掲げる「お互いに支え合い、安心して暮らしていける地域社会」を実現するために、がん患者、御家族の治療費負担の軽減を県民総ぐるみで考え、実行する。私は、そこに本県らしい一つの基金の形が浮かび上がってくると思うのであります。

そこで、お伺いいたします。

深刻な財政難の本県におきまして、徹底的な行財政改革と施策の選択と集中を進めながら、命を守る財源を捻出していくことは当然として、条例が包含する県民総ぐるみの理念から、幅広い県民の皆様から御賛同と御協力をいただける愛媛がん対策募金(仮称)を県民基金として設立し、がん患者、御家族の治療負担の軽減を図るべきだと考えますが、御所見をお示しください。

関連して、がん対策推進室の設置についてお伺いします。

本年2月議会で私は、本県がん対策を従来の縦割りを超えた県民総ぐるみの運動に高め取り組んでいくために、がん対策推進室(仮称)を設置すべきと提言させていただきました。

条例をエンジンとして、委員会というギアが入り、いよいよがん対策先進県愛媛の実現に向けて、県民総ぐるみでスタートを切った今がチャンスであります。

本県がん対策の推進において、保健医療機関との連携、国や県内自治体との連携、教育、経済、労働、福祉などの分野を超えた連携、民間、NPO団体との連携など、広域調整の上から県が果たすべき連携は実に多彩であり、先ごろ行われた愛媛県がん対策推進委員会の議論の中でも、そうしたタスク機能を備えた新たな部局組織を望む意見が出されたそうであります。

そこで、お伺いをいたします。

縦割りを超えたがん対策推進室(仮称)の設置は、県民総ぐるみによるがん対策を大きく前進させるのみならず、その新たな試みは本県行政をイノベーションさせるチャンスでもあると考えますが、改めてその設置に関する御所見をお伺いいたします。

続いて、子宮頸がんの予防対策についてお伺いいたします。

本県議会では、本年2月議会にて、子宮頸がんの予防対策の充実・強化を求める意見書が可決され、9月議会におきましても、田中議員、笹岡議員、玉井議員、三宅議員により、さまざまな角度からこの問題が取り上げられました。

こうした機運は、本県のみならず、昨年の子宮頸がん無料検診クーポン事業を皮切りに一気に全国に広がり、栃木県大田原市を初め約300の自治体で、また、都道府県では山梨県、京都府、徳島県が独自の公費助成を実現しております。こうしたことから、政府は、本年度補正予算として約1,085億円を計上し、期間が限定的ではあるものの、国による子宮頸がん予防ワクチンの公費助成が、ひとまず一歩前に進もうとしております。

御承知のとおり、子宮頸がんは、ワクチン接種と定期検診でほぼ100%予防できるがんと言われております。しかし、ワクチン接種には約5万円もの高額の費用がかかるため、経済的に接種を受けたくても受けられない世帯や、自治体の財政事情による地域格差が生じることが懸念され、その普及への最大の障壁となっているのが現実であります。

国民の命の公平性という観点からは、本来国が責任を持って公費助成を行うべきだと思いますが、今、20代、30代の若い女性の子宮頸がん罹患者は、他のがんに比べて圧倒的なスピードでふえ続けている現状を考えますと、我が愛媛から、できる地域から救える命を救いたいとのやむにやまれぬ思いが込み上げてくるのであります。

そうした思いから、私たち公明党愛媛県本部では、去る10月、11月にかけて、子宮頸がん予防ワクチンの公費助成を求める街頭署名を展開しました。県民の皆様の期待は私たちの想像を大きく上回り、おかげさまで温かい激励とともに、約2万6,000名もの皆様に署名の御協力をいただくことができました。この場をおかりして感謝申し上げますとともに、私たちは、皆様のお声を、御就任早々で多忙と存じますが、中村知事にお届けさせていただく所存でございます。

そこで、お伺いいたします。

9月議会にて、子宮頸がん予防ワクチンに対する県独自の公費助成を実施すべきという複数の議員からの要望に対し、保健福祉部長の答弁は、国の予算措置の動向を見きわめた上で対応を検討したいとのことでしたが、国の予算措置が行われ、状況が大きく好転する中、県は、市町が実施する子宮頸がん予防ワクチン接種の支援にどのように取り組むのか、お伺いをいたします。

がん対策について - 答弁 -

答弁:保健福祉部長

木村議員にお答をいたします。
まず、がん対策について、3点御質問がございました。

1点目は、患者を基点とした重層的な相談支援ネットワークを県の主導により構築すべきと考えるが、そのあるべき姿について所見を問うとのことでございます。

がん患者やその家族の方々は、身体面や精神面、さらには生活面でさまざまな不安や心配を抱えておりまして、その負担を軽減するためには、行政や保健医療機関、がん体験者等が、それぞれの特性を生かした役割分担と連携により、がん患者を含めた県民の視点に立って、相談支援体制を構築していく必要があると考えております。

このため、県では、がんに関する一般的な相談は、保健所や市町、検診団体等で対応いたしますとともに、医療に関しては、拠点病院の相談支援センターを中心に機能強化に努めてまいりましたほか、精神面や生活面の相談は、患者団体と連携し、拠点病院でサロンを開設する等、がん経験者によるピアサポート体制の整備にも取り組んできたところでございます。

しかしながら、県が患者団体に委託して実施をいたしました患者満足度調査では、相談支援センターの利用が低調であったほか、患者団体からは、病院外の身近な場所で気軽に相談できる窓口整備が求められておりますことから、今後、がん対策推進委員会において、改めて総合的な相談支援体制のあり方等について検討を進めることとされたところでありまして、がん対策推進議員連盟が提案されておられます全市町へのがんサロン設置との関係にも十分留意しながら、県民本位の相談支援体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

2点目は、愛媛がん対策募金(仮称)を県民基金として設立し、がん患者家族の治療費負担の軽減を図るべきだと考えるがどうかとのことでございます。

医療技術の進歩に伴い、高額な医療費が患者やその家族にとって大きな負担となっておりまして、とりわけ、がんは国民病と言われまして、男性の2人に1人、女性の3人に1人が罹患するおそれがある中、県民基金を設立し、患者、家族の経済的負担の軽減に活用するという御提案は、県民総ぐるみによる対策を推進する観点から、有意義であると考えております。

現在、がん対策推進委員会におきましても、木村議員お話のございました経済的負担の軽減を初め、がん予防の普及啓発や在宅医療の充実などを解決すべき課題として掲げ、その解決方策の一つとして、本県の実情に即したがん対策基金のあり方について議論が進められておりますので、県といたしましては、推進委員会の議論を踏まえ、必要な対策を検討してまいりたいと考えております。

3点目は、がん対策推進室(仮称)の設置についてどう考えているのかとのお尋ねでございます。

がん対策を実効性あるものにするためには、行政や医療機関等による取り組みに加え、新たに企業やNPO、県民等にも幅広く参画を求め、相互連携や創意工夫による取り組みを分野を超えて創出することが強く求められておりまして、県にはそのコーディネーターとしての役割が期待されていると認識をしております。

このため、県では、これまで、健康ボランティア等を対象としたがん対策推進員の養成や県内に事務所を置く保険会社や金融機関との連携による愛媛県がん検診受診率向上プロジェクトの推進等を図ってまいりましたが、このような取り組みをさらに拡充するためには、県みずからが、保健福祉や経済労働、教育等の所管部局間の連携により、総合的な企画、調整機能を強化する必要があると考えておりまして、がん対策推進委員会の御意見や木村議員の御提案の趣旨を踏まえ、行政組織のスリム化や効率化などの課題にも留意しつつ、県民総ぐるみによるがん対策を効果的に推進する庁内の仕組みづくりについて検討をしてまいりたいと、このように考えております。

答弁:中村知事

次に、子宮頸がん予防ワクチン接種の支援にどのように取り組むのかについてお答えをいたします。

子宮頸がん予防ワクチンについては、本年3月、県議会の総意により、国に対し公費助成制度の創設を求める意見書を提出していただくとともに、県においても、ワクチン接種に地域格差が生じることのないよう国において接種促進対策と財源措置を講じるよう、全国衛生部長会等を通じ要請してきた経緯がございます。

このような動きを受けて、国は平成22年度補正予算において、子宮頸がん予防ワクチンに加え、乳幼児に対するヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンの3種のワクチンについて緊急に接種を促進するため、子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金を計上し、国と市町村が各2分の1を負担するとともに、市町村負担分は地方交付税措置を講じるというスキームでの、ワクチン接種への公費助成制度が創設されたところでございます。

このため、県としては、県内全市町において早期に公費助成によるワクチン接種事業が開始されるよう、今議会において、国からの交付金による基金造成と、これを財源に市町に補助を行うための補正予算案等を上程したいと考えておりまして、今週中にも、市町に対する説明会を開催し制度の導入を働きかけるとともに、事業が円滑に実施されるよう接種対象者の設定や接種方法、安全性等に係る技術的助言、指導、医師会及び医療機関との調整に取り組むなど、積極的な支援に努めてまいりたいと思います。

なお、国の交付金事業は平成23年度までとされているため、県としては、平成24年度以降の助成制度の継続について国に強く求めてまいりたいと思います。

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