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農業の担い手問題について(2009年9月定例会)

農業の担い手問題について - 質問 -

次に、農業の担い手問題についてお伺いをいたします。

本年5月に公表された愛媛県政に関する世論調査で、次のような結果が出ていました。「あなたは、県内の農業をもっと盛んにするためには、県はどのようなことに力を入れたらよいと思いますか」という設問に対する回答で最も多かったのが「後継者を育成する」でありました。つまり農業の発展に向けて、今、県が最も注力すべきは、担い手育成だというのが、本県の民意と言えましょう。

翻ってその実態はどうか。農業の従事者数を直近10年間の推移で調べてみましたところ、1995年の13万5,590人から2005年は9万5,733人へと約30%減少していることがわかりました。中でも、その基幹的農業従事者数の推移は、1995年の5万7,236人から2005年は4万6,370人となっており、10年間で1万人強、毎年約1,000人の担い手が減少している計算になります。一方、新規就農者の動向は、昨年までの直近5年間で見てみますと、毎年平均約130人で推移しております。130人入って1,000人やめていくということは、産業としての発展はおろか、維持さえままならないという深刻さをあらわしているのであります。

加えて厳しいのは、超高齢化の進展であります。2005年時点で基幹的農業従事者のうち70歳以上の占める割合は43.4%、60歳以上ですと74.2%にまではね上がります。この超高齢化の実態をかんがみて、私は、担い手問題は限られた時間との戦いであると痛感せずにはいられないのであります。

そこで、お伺いいたします。
本県の農業における担い手対策について、現状をどのように認識し、今後、どのような戦略をもって取り組まれるのか、御所見をお聞かせください。

さて、去る5月31日、私は、民主党の玉井議員とともに千葉県香取市にある農事組合法人和郷園の視察に訪れました。マスコミでも広く取り上げられ、知る人ぞ知る農業界の革命集団であります。視察を通し種々感動と触発を得る中で、私は、担い手問題の解決の糸口を見つける思いがいたしました。

まず、農事組合法人和郷園についてでありますが、1991年に当時20代の木内博一代表理事を中心とする4名で野菜の産直から事業をスタートさせました。以来18年間で92軒の専業農家を取りまとめ、農産物の販売はもちろん冷凍加工事業、堆肥製造事業、バイオマスエネルギー事業、直営店舗事業、通販事業、海外輸出入事業などといった多彩な農業ビジネスに展開し、現在では約1,500名の雇用を生み、グループ売り上げ約50億円を実現しているのであります。

それを可能にしたものは何なのか。取材する中で私が着目した第1のポイントは、農家のせがれとしての自負心ということであります。

そのお話は、副代表理事の向後武彦さんから伺ったのでありますが、彼らはそもそも農業を継ぎたいと思っていなかった。むしろ絶対やりたくなかった。格好悪いし、もうからないし、報われないし。若いころ農業をそんなふうに見ていた彼らでしたが、学校卒業後さまざまな経過をたどりながらも、いずれ家業を継いだのでありました。もちろんモチベーションも上がりませんから、日々バイクを乗り回していた。その当時をほうふつとさせるような向後さんの熱のこもったお話の続きは驚きでした。あるとき、なぜ農家はもうからないのだろうと皆で考え始めるようになったのだそうです。その気づきこそ彼らの農業革命の第一歩となり、受け身から主体へという彼ら自身の内側をイノベーションさせる源泉となった。私が着目した第2のポイントは、この気づきであります。

そのようにして彼らが出した結論は、ことごとく常識を覆すものでありました。例えば、普通、農家は、おいしい作物をつくり、そして売るわけですが、彼らは、まず売ってから作物をつくると、これを逆転させたのであります。

また、農業は製造業であると定義しました。そう規定すると、適正利潤が確保されない製品はつくれないし、つくったとしても続かない。では、持続できる農業とは何かというふうに突き詰めて、今のビジネスモデルを構築されたのであります。
そのほかにもエピソードは尽きないのですが、この際、私が学ばせていただいたのは、行政の担い手対策を考えるとき、その問題解決には戦略が極めて重要だということであります。

そして、農業における最も有力な担い手は、現在従事されている方々の子弟である、これがそのとき私が得た仮説であります。なぜなら、その子弟は、今どこで暮らしているにしても、その昔、畑や海や山で育ててもらった恩があり、親への感謝があり年老いた親が気にかかる、そんな気持ちをだれしも持たれていると思うからであります。その子弟に着実に担い手になっていただくには何が必要か。また、担い手となって愛媛に帰っていただくためには何が必要なのか。

一口に子弟と申しましても、学生、社会人、年齢、家族環境などさまざまでありますが、それぞれの状況に応じたワンメッセージ、すなわち愛媛の農業をあなたに担ってほしいという明確なメッセージを本県独自の受け入れ環境やインセンティブの裏づけをもって発信する。私は、待ったなしの担い手問題解決には、明確な戦略に基づいたアプローチが必要と考えます。

そこで、お伺いいたします。
現状の後継者確保のペースでは物理的に間に合わないという危機的状況を十分御認識いただいた上で、農業従事者各位の子弟をターゲットとして担い手を確保するという戦略に対する御所見をお聞かせください。

次に、私が着目した2点目、担い手の気づきということに関してでありますが、和郷園の例で申しますと、なぜ農家はもうからないのだろうと気づいた瞬間こそ、彼らが真の担い手となった瞬間であったと思います。

とすると本県はどうなのか。新規就農者である担い手に対して、気づきを生む環境がどのように提供されているのか。栽培、育成などの技術はもちろんのことながら、新たな時代の農業をつくり行く担い手に欠かせない資質は、それをビジネスとして成立させる構想力と実行力であり、それは彼ら自身の気づきから始まると私は確信します。

例えば、和郷園を初め全国各地に見られる先進事例に直接触れる機会の提供、海外の農園経営を学ぶ留学機会の提供、商社とタイアップしてアジア諸国との貿易の実際や流通ノウハウを学ぶ機会の提供といったことは、担い手の気づきを生む絶好の機会につながると考えます。

そこで、お伺いいたします。
担い手に対するビジネス感覚や経営能力を向上させる場づくりを今後、新たに積極的に行うべきだと考えますが、御所見をお聞かせください。

農業の担い手問題について - 答弁 -

答弁:加戸守行知事

木村議員の質問に答弁いたします。
本県の農業における担い手対策について、現状をどのように認識し、今後、どのような戦略をもって取り組むのかとのお尋ねでございました。

本県の農業従事者は、木村議員お話のございましたように、2005年までの10年間で約4万人減少いたしておりますほか、基幹的農業従事者も同様に約1万人減少しておりまして、しかも、農業従事者の高齢化により、本県農業の将来を担う40歳未満が約1,600人でありまして全体の4%に満たないなど、このままの状態が続けば、近い将来、農業は担い手不足により衰退を余儀なくされるのではないかと認識いたしております。

このような厳しい現状にある農業の担い手を確保いたしますためには、農家の子弟はもちろんのこと、農地法の改正を有効に活用し、個人、法人を問わず多様な方々の参入を促進するほか、就農に際して必要な農地の確保や農業技術、資金の確保を強力に支援していかなければならないと考えております。

このため、県におきましては、新規就農を考えておられる方々を対象とした就農相談会や就農啓発講座の開催、農業大学校や先進的農家での実践的研修、農業法人への就職支援などを行いますとともに、先進的な営農に必要な機械、施設の整備に対する助成や農地の利用調整、制度資金の貸し付けなどを総合的に実施して、担い手の確保、育成を行っているところでございます。

なお、農業への新規参入が少ない要因といたしましては、農業所得が他産業に比べて極めて低いことが原因でありますことから、これまでの生産基盤の整備や農業経営の安定を図るための価格補てん対策等に加え、商工業者等と連携した加工分野への進出や、より高く取引できる直販などの新たな販路開拓への取り組みを積極的に支援し、農業所得の向上を図り、本県農業を支える担い手の確保と定着に努めてまいりたいと考えております。その他の問題につきましては、関係理事者の方から答弁させることといたします。

答弁:農林水産部長

木村議員にお答えいたします。

農業の担い手問題のうち、まず、農業従事者の子弟をターゲットとして担い手を確保するという戦略について所見を問うとのお尋ねにつきましては、農業の担い手の確保が喫緊の課題となっている中で、農家子弟の就農は、農地の確保や機械、施設の整備等に大きな初期投資が必要ないことに加えまして、一定の生活基盤を確保しながら生産技術の習得も図れるなど営農上の利点も多く、担い手問題解決の有効な手段の一つであると認識いたしております。

このため、県としては、農業大学校に高校生を対象にした就農意欲を高めるための啓発講座や、えひめ農林漁業担い手育成公社において、農家子弟を対象にした栽培技術や経営に関する実務研修コースを設けるとともに、農家子弟が農業用機械、施設等を導入し親から自立して営農する場合、その導入経費を助成する青年農業経営者定着促進事業を創設するなど、就農の促進と定着を支援しているところであります。

なお、農家の子弟が、地元を離れ他の産業に勤めている場合は、就農のきっかけをつかむことがなかなか難しいことでありますから、今後は、都会で働く農家の子弟が地元に帰って就農することを支援しております東京のNPO法人で、本県の上島町で耕作放棄地再生事業にもかかわっている農家のこせがれネットワークなどとも連携し、農家子弟の就農促進による担い手確保を図ってまいりたいと考えております。

次に、担い手に対するビジネス感覚や経営能力を向上させることができる場の提供を、今後積極的に行うべきと考えるがどうかとのお尋ねにつきましては、農業者が経営者として創意工夫を凝らし、農業所得の向上につながる経営を目指すためには、国内外の先進的な農業生産や農業経営を行っている農家はもちろんのこと、異業種の食品加工や流通販売業などから高度な栽培技術や消費者のニーズ、PR戦略、販売手法などを積極的に学び、経営に生かしていくことが重要であると考えております。

このため、県におきましては、これまでオーストラリアなどの海外を初め県内外の柑橘や野菜栽培等の先進事例、加工や販売に取り組む地域の起業活動の視察研修を支援しておりますほか、販売戦略やビジネスマナーに関する講演会や経営感覚と管理能力を向上させるためのセミナーを開催いたしますとともに、新たな商品開発や販路開拓のための市場や量販店、消費者や他産業従事者との交流会を開催するなど、農業をビジネスとして成功させるための場づくりに努めているところであります。

今後とも、新規就農者を初めとした青年農業者や担い手である認定農業者等の要望も十分に把握しまして、農業者みずからがビジネス感覚や経営能力を向上させるための機会を数多く提供することによりまして、新たな経営にチャレンジする意欲的な農業者の育成に努めてまいりたいと考えております。以上でございます。